キャリアガイダンスVol.430
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近い将来、今ある職業の多くが消え、仕事のカタチが激変すると言われるなか、これからを生きていく高校生は何をもとにキャリアデザインを行えばよいのでしょうか。現在の職業分類をベースとしたアセスメントや職業体験に私たちはどのような意味をもたせればよいのでしょうか。職業教育の新しいあり方を、高校と専門学校が考えていかなければなりません。それこそ私たちが「高×専連携教育」を進めている理由です。 その際、重要な視点が3つあります。1つめはキャリアアンカー(キャリア選択の際に譲れない価値観や欲求)の探索です。ひと口で料理人といっても幅の広い職業であり、一人ひとりのキャリが続き、「日本料理を世界に広めたい」と話す学生も増えてきました。日本人だけを対象にすれば縮小傾向にある市場も世界を見据えれば機会は拡大。こうした需要予測をキャリアアンカーへつなげる必要があります。 3つめは新しい職業を創造する力の育成です。一般に職業教育は、即戦力たる技術の育成に注力しがちですが、それだけでは不十分。現在の職場への適応を第一に学んだとしても、いずれ色褪せ、場合によってはAIやロボットに代替されるかもしれません。しかし、お客様に喜んでいただくというこの職業の本質は不変です。また、時代の転換期においては、変化に対応する高いマネジメント能力や付加価値を生み出すプロデュース能力が求められます。これらはAIにできることではありません。 研究・出版部門をもつ本校は、創設以来半世紀にわたり、「知識」や「知見」を蓄積してきた自負があります。体系化された「知識」や「知見」をベースに、「高×専連携教育」を推進し、新しい職業教育を構築していきます。そのなかで、高い就労意欲をもち、食の仕事のあり方自体を変えていく強い意志をもった若者が生まれ、業界に大きな潮流が起こることを期待しています。【校長プロフィール】つじ・よしき●1964年大阪府生まれ。学校法人辻料理学館理事長、辻調理師専門学校校長、辻調グループ代表。2000年九州・沖縄サミットで首脳晩餐会の料理監修、19年G20大阪サミットでは首脳夕食会のエグゼクティヴプロデューサーを務める。料理人発掘コンペティション「RED U-35」審査委員長を務めるなど食文化の発展に貢献。18年フランス国家功労勲章「シュヴァリエ」受章。【専門学校プロフィール】1960年辻調理師学校として創設。1年制の調理師本科、2年制の調理技術マネジメント学科、3年制の高度調理技術マネジメント学科。辻調グループとして、辻調理師専門学校のほか、辻製菓専門学校、エコール辻大阪、エコール辻東京、辻調グループフランス校。高校や産業界とも連携しこれからの時代の職業教育を共に構築していきたいアアンカーにより職業の見え方は異なります。例えば医療に関心の深い学生は病院などの給食現場や薬膳料理を、農業に関心のある学生はオーベルジュや有機食材に興味をもったりします。そこで私たちは、多様なキャリアアンカーを可視化するため、第一線で食に関わる人々のストーリーを検索できる〝PROFESSIONs〞というサイトを公開しています。高校生がロールモデルやキャリアアンカーを見つけるツールにしてほしいと思います。 2つめは未来予測への取り組みです。例えば、超高齢化社会を迎える日本では、医療や福祉に関心をもつ料理人の活躍の場が広がっています。また、五輪や万博などの国際イベント̶変革に挑む̶まとめ/堀水潤一辻調理師専門学校校長辻 芳樹612019 DEC. Vol.430

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