キャリアガイダンスVol.430
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総合的な学習の時間といった探究の系譜を含め、これまでの教科教育の蓄積を可視化したことで、行間を読まなければならなかったこれまでの学習指導要領が理解しやすくなったと思っています。学習指導要領で示した大枠を基に、個々の子どもたちや学校の状況に応じて、学校として育成したAIの進化に浮き足立つ必要はない。日本の教育が150年にわたり蓄積し目標としてきたものはそれに優る学習指導要領とその解説における各教科の目標と見方・考え方(国語科と理科の例)図とができる。また、対話や協働を通じて新しい解や「納得解」も生み出せる。だから浮き足立つ必要はないということでした。 確かに、そうした力は学校教育が大事にしてきたものです。すなわち、教科固有の見方・考え方を働かせて深く考えたり、学び合いを通じて一人も取り残すことなくクラス全体で理解を深めたりというのは日本の教育のお家芸でもあります。 だからといって安心していいわけではありません。目の前の子どもたちが20年・30年後、個性を活かし、社会で自立的に生きていくことが学校教育の目的です。それを踏まえ、変化をどう捉え、どういう学びが必要かという議論を10年に一度するのが学習指導要領の改訂です。 私は覚悟を求められた気がしました。長年、日本の学校教育が大切にしてきた学びを、理想論ではなく、本気で目指さなくてはいけないし、これまで培ってきた強みを実質化する必要がある。こうして議論はより現実を踏まえたものになりました。 今回の改訂のポイントを私なりに整理すると、①資質・能力の三つの柱による教育課程全体の構造化 ②「主体的・対話的で深い学び」による授業改善 ③カリキュラム・マネジメントの確立 ④社会に開かれた教育課程という理念の4つを挙げることができますが、ここでは日々の授業を念頭に補足させていただきます。 ご承知の通り今回の改訂では、学力の3要素に基づき、「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」を資質・能力の三つの柱として総則に明記。すべての教科・科目等の目標や内容も、これに対応する形で整理し(図)、教育課程全体を構造化しました。 大正自由教育や戦後の新教育に始まり、前々回改訂における週3コマのい資質・能力を明確にすることが大事だと思います。 次に、「主体的・対話的で深い学び」という観点からの授業の見直しや改善です。主体的な学びとは、生徒一人ひとりが自分の人生との関係で学びを捉えるなど、学びが自分事になっているかということ。また、対話的な学改めて理解してほしい全教科が三つの柱で整理された意味※文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 国語編』『同 理科編 理数編』より。下線は編集部。■国語科の目標言葉による見方・考え方を働かせ,言語活動を通して,国語で的確に理解し効果的に表現する資質・能力を次のとおり育成することを目指す。(1) 生涯にわたる社会生活に必要な国語について,その特質を理解し適切に使うことができるようにする。(2) 生涯にわたる社会生活における他者との関わりの中で伝え合う力を高め,思考力や想像力を伸ばす。(3) 言葉のもつ価値への認識を深めるとともに,言語感覚を磨き,我が国の言語文化の担い手としての自覚をもち,生涯にわたり国語を尊重してその能力の向上を図る態度を養う。●言葉による見方・考え方とは…言葉による見方・考え方を働かせるとは,生徒が学習の中で,対象と言葉,言葉と言葉との関係を,言葉の意味,働き,使い方等に着目して捉えたり問い直したりして,言葉への自覚を高めることであると考えられる。■理科の目標自然の事物・現象に関わり,理科の見方・考え方を働かせ,見通しをもって観察,実験を行うことなどを通して,自然の事物・現象を科学的に探究するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。(1) 自然の事物・現象についての理解を深め,科学的に探究するために必要な観察,実験などに関する技能を身に付けるようにする。(2) 観察,実験などを行い,科学的に探究する力を養う。(3) 自然の事物・現象に主体的に関わり,科学的に探究しようとする態度を養う。●理科の見方・考え方とは…「理科の見方・考え方を働かせ」とあるのは,「自然の事物・現象を,質的・量的な関係や時間的・空間的な関係などの科学的な視点で捉え,比較したり,関係付けたりするなどの科学的に探究する方法を用いて考える」という「理科の見方・考え方」を働かせることを示している。82019 DEC. Vol.430

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