キャリアガイダンスVol.430_別冊
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2Vol.430 別冊付録 これまでもずっと、日本の英語教育には問題があると指摘され続けてきた。 中学・高校と6年間、最近では小学5年生から始まるので8年間も英語を学習しながら、なぜ使える英語が身に付かないのか。対策として、英語の4技能の習得が打ち出され、また「コミュニケーション英語」や「英語表現」という科目も新設された。 筆者はずっと日本の英語教育の最大の問題は、歴史的に明治以来、欧米文化の移入のための翻訳英語が中心をなしてきたことにあると考えてきたので、この改革は大いに成果をもたらすだろうと期待した。しかし、それでもまだ英語教育の実態はそれほど変わっていないのではないか。 なぜか。英語の先生方に話を聞くと、「4技能重視」や「コミュニケーション英語」「英語表現」というように看板は架け替えられたが、実態としては旧来の英語教育が多くの場合継続されているからだという。つまり多くの場合、「コミュニケーション英語」では旧「リーダー」の授業が、そして「英語表現」では旧「グラマー」の授業が、ほとんどそのまま行われている実態があるというのである。 そして教科書も、例えば「英語表現」では旧来と同様に英文法の練習問題が掲載されている。なぜかと言えば、これを生徒にやらせる授業には多くの先生が慣れていて、「慣れた授業を行い続けたい」という力学が働くからだという。だから、そのような旧来の授業を続けられるような教科書が採用される傾向も強い。 筆者は、これまで、いくつかの先進的でコミュニケーションを中心にした英語授業を見学してきたし、紹介記事も書いたことがある。実際に、そのような新しい授業で英語力を付けて大学に入ってきた学生の例も多数知っているが、それが一部に過ぎず、まだ多くの生徒が置き去りになっているとしたら、それは大きな問題ではないだろうか。 そう考えて、「教えない授業」で知られる新渡戸文化学園の山本崇雄先生に取材した。 山本先生は、新渡戸文化学園では中1と高1の英語を担当されている。まずお話を聞いて驚いたのが、「中1では英語をすぐに教えることはしません」という言葉だった。 近年では小学校で英語の授業があるとはいえ、同校に入学してくる生徒の英語力はさまざまだ。その段階でアルファベットや単語を無理に覚えさせても苦痛になり、英語が嫌いになるだけである。 そこで、授業では生徒たちに将来の見取り図を描かせる。そして自分にとってなぜ英語が必要なのかを考えさせるのである。そのプロセスでは、生徒たちにSkypeやウェブ会議システムZoomで海外の人とつながらせるなど、刺激を与え揺さぶっていく。 そうすると、最初は単純だった将来の見取り図が次第に意味取材・文/教育ジャーナリスト 友野 伸一郎中等教育で6年間英語を学んでも使えない。英語が苦手になる。「4技能重視」「コミュニケーション英語」「英語表現」「小学校からの英語教育開始」等は、このような問題への対応策として打ち出されてきた。しかし、にもかかわらず一部を除いてはあまり大きな進展は見られないという。その原因は、従来型のコンテンツを教え込むコンテンツベースの教育から脱し切れていないことにあるのではないのだろうか。求められているのは、能力を活用するコンピテンシーベースへの転換ではないのだろうか。このような現状を越えていく方途を、「教えない授業」に取り組む山本崇雄先生(新渡戸文化学園)に取材しつつ考えてみた。生徒が描いた「将来の見取り図」①

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