キャリアガイダンスVol.431
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に変容しました。地域の人には、教員とは違う力があるんだと思いました。― 学校が地域社会に開かれることが大切だとして、では、第一歩をどのように踏み出せばいいでしょうか?佐々木私の場合「この人なら信頼できる」という個人的なつながりから始めます。正直に言えば、校内調整でストレスを抱えたくないし、個人的にワクワクすることから始めたいのです(笑)。組織としての仕組みにどう落としこめるかをちゃんと考えるのは後から。「学校のために」とか、「地域のために」という発想ではなく、まずは「生徒のために一緒にやりましょう」くらいがいいと思うんです。もちろん校長とはあらかじめすり合わせたうえで。まずやってみて形が見えると評価してくれる学外の人たちが出てくるし、学内でも「いいんじゃない」という人が出て、仕組みになっていくという感じです。内堀実際の社会におけるつながり今までもっていた世界観が揺さぶられたときに起こるのでしょう。そのためには、本物の課題と「マジ」にぶつかることが有効だと思います。内堀もう一つ、リアルに触れる意義は、学びそのものの楽しさを実感しやすいことです。残念ながら私の高校時代は講義型の受験対策が基本で、授業や受験勉強が面白いと思ったことはあまりありません。中には、学問の楽しさが垣間見られる授業もありましたが少数派。教科書をなぞるだけ、受験に備えるだけでは授業は面白いはずがありません。その点、リアルな学びは、「学ぶ理由」や「学びの楽しさ」とシン方ってそんな感じですよね。最終的には組織対組織という関係で物事を進めるとしても、初めからそこを目指していたら動きはにぶくなるばかり。個人的なつながりのなかで、「生徒にこういう力をつけるためにこんなことをしたい。ついては、今度、連れていっていいですか」くらいから始めるのがいいのではないでしょうか。岡崎一見、教育に無関心そうな地域にも、地域のため、子どもたちのため、と汗をかいてくれる人は必ずいます。そういう人を発見するためにはヒアリングをすること。先生自ら地域に出向き、これからの教育のあり方を語り、生徒を共に育てるという目的を共有しつつ、住民から地域の魅力と課題も聞き出す。互いの接点を見つけることが出発点になると思うのです。― そうやって個から組織へ発展したとして、持続可能な取組となるために大切なことは何でしょうか?佐々木メインで動いている人が、一人で抱えこまず、次に続く人たちにバトンを手渡すことだと思います。クロしやすいと思います。岡崎現在、私がカリキュラム等専門家として支援している山形県の高校での話です。ある大人しい生徒が、全国小規模校サミットというイベントのコアチームに入りました。真夏の開催で熱中症が心配されるなか、彼女は救護班として活動しなければならず、先生から「消防署に行って対策を聞いてきたら」とアドバイスを受け、それを実行しました。プロから学んだことで自信がついたのでしょう。イベント前日「大丈夫?」と声をかけると、「バッチリです」という返事。その後、学校に案内がきたすべてのボランティアに参加するまで子どもたちは常に社会とつながっている。学びもまた社会と切り離されるべきではないうちぼり・しげとし●長野県内の高校教諭、長野県教育委員会事務局、軽井沢高校校長、上田高校校長などを経て、2018年4月より現職。学びの改革を中心に県内の高校改革を推進。中央教育審議会「新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ」・「通信制高等学校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議」委員。「2019年度地域との協働による高等学校教育改革推進事業 企画評価会議」・「全国高校生フォーラム2019」協力者。高校生がプロジェクト学習の成果を発表する「マイプロジェクトアワード」審査員等も務める。長野県教育委員会事務局 高校改革推進参与内堀繁利さんどうすれば、高校は地域社会に開かれるのか地域を巻き込み社会とつながる学びへ高校が地域社会と連携・協働する意義132020 FEB. Vol.431

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