キャリアガイダンスVol.431
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協働というと、その響きから都市部の高校は関係ないように感じられるかもしれません。しかし、リアルな学びに触れることの意義は、全国どこの高校でも同じ。大切なのは地域「社会」との連携・協働です。佐々木仰る通り、地域とはその学校が所在している社会のこと。昔であれば、そこに濃密なコミュニティが存在していましたが、今は希薄。特に都市部はそれが顕著です。本校の生徒の多くも学校のある日野市について何も知らずに卒業していきます。本来その立地や条件ならではの教育ができるのに、もったいないことだと思います。岡崎都市にしろ地方にしろ、自分が生きている世界とつながり、具体と抽象を行き来することが重要です。ただ、都市部と比べ、地方には自然資本が多いことが特徴。空気や水を生み出す森や、食べ物を生み出す田畑なくしては経済も社会も成り立たず、人として生きていけません。根源的なところからアプローチできる地方の高校は、学びの環境が整っていると私は思っています。内堀教育に携わる人たちの最大のモチベーションは、やはり生徒の変容。子どもたちの目の輝きを目の当たりにした大人はさらに前に進めると思います。教育実践が広がりを見せるう内堀組織の持続可能性を生むには、「当事者意識」に加えて「仕組み」が必要。学校と地域との協働体制をつくるためには、関係者の意識改革を促しながら、コンソーシアムなどの仕組みを構築し、活用することが重要です。岡崎私たちのような第三者がまちづくりに携わる際、よく「穴だらけの風呂敷を広げろ」と言われます。隙のない提案をすると、「そこまでできているんだったら、あなた方でやってよ」となりかねません。けれど穴だらけだと「提案自体は面白いね。ただ、ところどころおかしな点があるので、俺えで、生徒の成長は絶大な説得力です。― 他に、地域の立場から、高校に伝えておきたいことはありませんか?岡崎最初は個のつながりから始めるとしても、地域との協働が具体的な話になってきたら、その後のフェーズをきちんと共有することが大切です。例えば、市町村の職員は計画にそって動くため、総合計画や教育大綱の中に「高校が地域づくりの重要なパートナーである」という文言を明記すること。担当部署をはっきりさせることも大事です。今後、国や自治体から施策がもちかけられることもあると思いますが、その際にも行政の仕組みを知っておくと無駄な体力を使わずに済むと思います。また、地域の人は学校文化を、先生方も地域の実情を知りません。互いに戸惑うことも多いため、できれば最初の数年は、双方のたちも一緒にやらないとダメだな」となる。当事者が役割を果たすことが重要であり、例えば農家のおばあちゃんが「私も高校生の成長に一役買っている」という自覚をもてば、地域力の底上げになります。「連携・協力」から「協働」レベルになるためには、関係者全員の当事者意識が不可欠です。内堀地域協働はあくまで手段。地域と協働することで何ができるのかを地域と共によく考え、育てたい生徒像を共有しながら、行動に移すことが大事です。そういう意味で補足したいのですが、「地域」連携や「地域」まずは個と個のつながりから。ワクワクすることから始めればいいささき・ひろし●映画の助監督や予備校動務などを経て教員に。教科は国語。演劇部顧問。現在2学年担任。授業に演劇的手法を取り入れるなどアクティブ・ラーニングの活用に積極的。生徒の学びと社会とのアクセスポイントを多様な形で創り出すため、学校がある日野市を中心に多摩地域で、学校の枠を超えて自治体、企業、NPO、大学、保護者等と連携した授業や事業を進めている。東京都立日野台高校指導教諭佐々木 宏さん142020 FEB. Vol.431

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