キャリアガイダンスVol.431
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らやることが大事。そのために、トップダウンで進めるのではなく、ミドル同士で検討、決定ができるようにしています」(藤田校長) 探究活動で身に付ける力を生徒一人ひとりが意識しながら取り組めるよう、単元ごとに、新学習指導要領が示す資質・能力の3つの柱を盛り込んだルーブリックを作成し、自己評価および他者評価を行っている。今年度プログラムに取り組み始めたばかりの1年生は、評価項目のなかでも「伝達力・発信力」の自己評価が低い傾向にあるが、未病のグループワーク発表会では、生徒の堂々とした姿が見られた。 「こちらから教えなくても、生徒は動画やアニメーションを作って表現するなど工夫して発表していました。機会があれば自ら考えアイデアを出すことのできる生徒たちなのだと、改めて感じました。校外からのゲストも多数参加するなかでの発表は、生徒たちの自信にもつながったようです」(野秋先生) 動き始めた探究プログラムの手応えから、「子どもたちの成長を感じる場面が増えるにつれ、先生方のやりがいも向上し、取組は加速していくだろう」と藤田校長。さらに、多様な分野が関係する探究活動に学校全体で取り組んでいくことで、各教科においても社会の課題を意識した授業を促進し、教科横断型の学びへと発展させていく方針だ。 また、地域と協働での取組は、高校3年間の枠組みにとらわれない活動に発展していく可能性もあるという。 「探究プログラムで取り組んだ課題は高校生のうちに解決する必要はなく、むしろ課題に対するモヤモヤを抱えたまま卒業し、進路先で解決策を追い求め続けていってほしい。そのなかで、課題解決のために自ら起業するぐらいの熱意と行動力が育っていくことを期待しています」(藤田校長)かけ、同校が目指す生徒を育成するためのコンソーシアムを構成。カリキュラム開発やフィールドワークの実施、評価設計など多岐にわたって支援や助言を得ながら実施している。 例えば今年度の1学年「未来探究」では、まず地域の商店街や山林などを訪れるフィールドワークを実施し、地元企業を講師として食の問題について講演会を開いた。そのうえで未病に関するグループワークに取り組み、その成果発表会は企業の協賛で開催。審査員として山北町長や企業の方などを招き、生徒は多様な視点から助言をもらった。来年度の2学年のプログラムでも、地域の協力の下でフィールドワークを充実させる計画だ。 「今はスマホであらゆる情報の〝一般論〞が入手できますが、そのことがむしろ視野を狭くしているように感じます。リアルな社会での見聞や経験を重ねることで、相手の立場に立って想像する力を育んでいくことが大切ではないでしょうか」(藤田校長) 「教員の手を離れて地域に出てさまざまな活動を行うなかで、失敗しながら学び、それを積み重ねて大人になってくれたらと願っています」(野秋先生) しかしながら、さまざまな団体・企業と、〝生徒の育成〞という目的を共有し、足並みを揃えて取り組んでいくことは簡単ではない。 「学校側も、行政や企業も、担当者がやらされ感ではなく面白さを感じなが地域の課題に関する個人テーマを設定して探究活動を実施。そして、3学年では行政に向けて地域の課題解決策を提言するというものだ。 このプログラムのポイントは、学校外のさまざまな機関との協働で展開される点にある。同校は今年度、山北町、地元企業や団体、近隣大学などに呼び地域を知るためのフィールドワークは、町の協議会の協力により、林業体験や商店街巡回、史跡めぐりなどを行った。未病グループワーク発表会では、子ども向け紙芝居や、地元特産の足柄茶などを活用して健康意識を高めるアイデアが提案された。行政幼稚園・小・中学校●神奈川県 ●神奈川県教育委員会 ●山北町●山北町教育委員会 など●近隣こども園・幼稚園・保育所・小中学校 企業・団体●かながわ西湘農業協同組合山北支店 ●山北町商工会 ●山北町観光協会(予定) ●総合型地域スポーツクラブ ゆいスポーツクラブ ●小田原ドライビングスクール ●南足柄みらい創りカレッジ(予定)など教育機関・専門家●早稲田大学客員教授●OECD日本イノベーション教育ネットワーク事務局長 ●教育ジャーナリスト●大正大学(予定) など機会を与えれば自分たちで工夫し始める学校フィールドワークから発想し提案したことが自信に●フィールドワークを行ったことから地域を身近に感じるようになり、未病グループワークでも参考になりました。自分の知識や経験を基に自由に考えていくことは、聞いているだけの授業より楽しいです。●未病グループワークの発表では、限られた時間内に伝えるのが予想以上に難しかったですが、言葉を選びながら発表まで自分たちで考えてやりきったことで、自信がつきました。今後の探究活動では、みんなの意見を取り入れつつ、自分の意見をもてるようになりたいです。1学年の清枝歩美さん・大浦奈々さん・古谷 樹さん・工藤龍馬さん。地域社会と協力し、生徒を育てる体制192020 FEB. Vol.431地域を巻き込み社会とつながる学びへ実践事例レポート

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