キャリアガイダンスVol.431
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さいたま市立高校として、隣接する市立小・中学校や地域と日常的に交流してきた浦和南高校。市教育委員会の「特色ある学校づくり」計画では「地域連携型高校」に指定され、地域に根ざした学校づくりを進めてきた。地域の青少年育成活動に参加したり、小・中学生を対象に学習サポートや各部活動による星空観察、陶芸、書道、卓球、サッカーなどの教室を開いたりと、生徒が地域とつながる機会も多くある。地域の人々からも「南なんこう高」の愛称で親しまれ、2018年度に17年ぶりに全国高校選手権大会に出場したサッカー部には、「地域を挙げて熱い声援を送っていただいた」と、同校に長年勤務する稲垣眞人先生。2019年度に着任した上原一孝校長は、こうした地域との連携が当たり前のように行われていることに驚いたという。 「大学進学や就職で東京をはじめ地域外に出ていく生徒が多いなか、自分の生まれ育った地域に誇りをもち、貢献したいと思ってくれる人材を育てることが求められます。東京志向の強い首都圏内の地域だからこそ、より一層その仕掛けが必要だとも感じています。浦和南高校には、地域とのつながりが強いという素晴らしい伝統があります。これを一過性の交流で終わらせず、生徒の体験的・探究的な活動を拡充して学びを地域や社会と結びつけていくことで、未来のコミュニティリーダーとしての意識づけをしていきたいと考えています」(上原校長) 体験的・探究的な学びの機会として2003年度から希望者を対象に行っているのが、「社会探検工房」だ。夏休みを利用して企業や研究所、大学などを見学し、社会の第一線で活躍する人たちから話を聞く。例えば2019年度は、Yahoo、テレビ朝日、産業能率大学の3カ所を訪問。産業能率大学ではワークショップ形式でプレゼンテーションの手法を学び、それを活かして校内での報告会では自作のパワーポイント資料でプレゼンテーションを行った。見聞きしたことを将来の進路設計に役立てることに加え、論理的思考法や表現の手法を学ぶことも目的の一つだ。また、社会探検工房では日本科学未来館も訪れる。生徒が小・中学生を引率して同館を訪れる「ジュニアインタープリター」プログラムの事前リサーチのためだ。「子どもたちに教えることで、生徒自身も深く考え、成長する。仲間と共に取り組み、自分たちで創造していく。まさに主体的・対話的・協働的な活動です」と、稲垣先生は言う。 東海大学海洋研究所の協力を得てお話を伺った先生方。写真左から、稲垣眞人先生、小澤祐介先生、上原一孝校長、池田恭輔先生、福島 聡教頭。地域の未来を担う人材としての意識づけが必要つながりがつながりを呼び、外部との連携網が広がる取材・文/笹原風花外部との連携による取組■虹色チャレンジスクール(小・中学生対象) 学習サポート、各クラブによる星空観察、陶芸、 書道、卓球、サッカー教室など■ジュニアインタープリター(小・中学生対象)小・中学校■ジュニアインタープリター(日本科学未来館)■海の生物学(東海大学海洋研究所)■大学出張講義(埼玉大学)■高大連携協定による受講・単位認定 (埼玉大学、獨協大学)■社会探検工房(産業能率大学など)大学・研究機関■社会探検工房 (Yahoo、テレビ朝日、小学館、読売新聞社、 ソニー・ミュージックエンタテイメントなど)■Sports-Tech & Business Lab (49の企業、大学、自治体)企業・団体1964年設立/普通科/生徒数966人(男子469人・女子497人)/進路状況(2019年3月実績)大学275人・短大6人・専門学校21人・その他26人学校データ地域や小・中学校との交流を基盤に大学や企業とも連携。体験型・探究型の活動を通して、未来のコミュニティリーダーとしての自覚を育む浦和南高校(埼玉・市立)202020 FEB. Vol.431
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