キャリアガイダンスVol.431
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ば、SDGsが掲げる目標の一つ、「産業と技術革新の基盤をつくろう」については、地震が起こってインフラが停止したと想定し、「皆さんはこの南高周辺の復興を担うリーダーです。インフラを回復させるにあたり、どれから復旧させますか」と問いかける。探究主担当の小澤祐介先生は、「ただ課題を知るだけでなく、批判的・協働的に思考し、最終的には、自分ならどうするか、自分には何ができるか、という創造的思考にまで落とし込みたい」と話す。 日頃からの地域との交流を土台に、外部との連携が進む浦和南高校。「新しい学習指導要領のもと、これまでの取組をどう位置付け、意味付けていくかが今後の課題」というのが、上原校長はじめ先生たちの共通の見解だ。 「例えば探究で取り組んでいるSDGsなどは、グローバルとローカルをしっかりと関連づけていかないと、机上の空論になりかねません。そこをいかに結びつけ、さらに新しい学習指導要領に即したカリキュラムにしていくか、新しい大学入試への対応も含めて、模索しているところです」(小澤先生) さいたま市では将来的にすべての小中学校をコミュニティスクールにする方針であり、それに先駆けて2019年度に同校がコミュニティスクール先進校に指定された。新たに学校や地域、行政の関係者からなる協議会を設置し、高校の取組の報告や意見交換を定期的に行っている。「未来のコミュニティリーダーを育てるために、地域により開かれた学校を目指し、多様な外部の組織・人材と生徒とをつないでいきたい」と福島 聡教頭は締めくくった。るという事情などから受講者は多くはないが、過去には単位を取得した生徒もいる。また、49の企業、大学、自治体が参加する「Sports-Tech & Business Lab」に、全国の高校で唯一参加。部活動の数値やプレーなどを科学的に分析し、非認知能力の伸びの測定や課題解決能力の育成に外部機関と協働して取り組んでいる。こうして地域だけでなく大学や企業などさまざまなステイクホルダーとの連携が進んでいるのが、同校の特色だ。 さらに、2018年度秋からは、総合的な探究の時間のカリキュラムを刷新し、国連の開発目標であるSDGsに取り組んでいる。グローバルな視点で提示された課題について、ローカルな課題とつなげる工夫がなされている。例え開催される体験宿泊学習「海の生物学」や埼玉大学の生物系の教員による出張講義も、長く続く取組だ。担当する池田恭輔先生が「大変ありがたいことに、ジュニアインタープリターでつながりのあった日本科学未来館から東海大学海洋研究所を紹介していただき、さらに派生して埼玉大学の先生にも来ていただけることになった」と言うように、同校では一つのつながりをきっかけにどんどん外部との連携網を広げている。 高大連携も進んでいる。市立4高校は埼玉大学との連携協定を結んでおり、生徒は大学の授業を受講でき、単位も取得できる。キャンパスが離れてい左から、2学年の加藤 温さん、越川咲希さん。探究ではグローバルな課題を地域の課題につなげ自分事として考える新学習指導要領や新入試にどう位置付けていくかが課題地域社会と協力し、生徒を育てる体制自ら一歩踏み出し、率先して行動することの大切さを学ぶ●サッカー部が行っている地域の小学生向けのサッカー教室に参加しました。子どもたちに教えることで初心に返ることができ、コーチ陣の気持ちも少し理解できたように思います。こうした活動に参加するのは初めてでしたが、自分から一歩踏み出してみようと思えるようになり、夏にはサッカーの海外選抜遠征に挑戦しました。(加藤さん)●社会探検工房では、商品やサービスの作り手の方々の話を聞き現場を見ることができ、とても興味深く刺激的でした。企業によって雰囲気も仕事内容もまったく違ったので、就職する際には自分に合ったところを選ぶ必要があることを実感しました。また、情報の集め方や伝え方に試行錯誤しながら取り組んだジュニアインタープリターを通しては、自分から率先して行動する力が身についたと感じます。(越川さん)行政●さいたま市 ●青年育成辻地区会小・中学校●さいたま市立辻小学校●さいたま市立南浦和中学校企業・団体●Yahoo ●テレビ朝日 ●小学館 ●読売新聞社●ソニー・ミュージックエンタテイメント など研究・教育機関●日本科学未来館 ●東海大学海洋研究所 ●埼玉大学 ●産業能率大学 ●獨協大学 など学校社会探検工房でYahooの社屋を訪れ、社員から事業や仕事内容の説明を受ける生徒たち(写真上)。深海魚ミズウオの胃を解剖して内容物を調査する、海の生物学の一幕。このときはビニール袋が発見された(写真左)。212020 FEB. Vol.431地域を巻き込み社会とつながる学びへ実践事例レポート

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