キャリアガイダンスVol.431
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 2019年度より文部科学省委託事業「地域との協働による高等学校教育改革推進事業(グローカル型)」に指定された榛原高校。地域の課題解決のために必要な人材を育成し、還流させることを目的にした「HAFプロジェクト(HAIBARA ACHIEVING FUTURES PROJECT)」により、地域と連携しながらグローカルリーダーの育成に取り組んでいる。 遡ること5年ほど前、下村武治先生をはじめ一部の教員は、榛原高校の未来に大きな危機感をもっていた。 「地域の人口減少・少子化が進むなか、このままでは10年後の榛原高校は存続さえ危ぶまれるだろうと感じていました。一方で、生徒は親と学校の先生以外の大人と話す機会がなく、地域とのつながりもない。将来的に地元に戻るという選択肢をもたせるためにも、地域のことを知り、地域への誇りや愛着をもった生徒を育てたいと考えるようになりました」 一方、同校のある牧之原市では「対話によるまちづくり」を進めており、2016年度には高校生や大学生、地域住民らが〝対話〞を通して地域課題の解決に取り組む「地域リーダー育成プロジェクト(CLIP)」が立ち上がった。参加した生徒たちは、大人たちが地域への思いを語るのを聞き、地域の魅力に気づき、直面する課題を目の当たりにした。また、市が育成・認定する「市民ファシリテーター」から対話やファシリテーションのルールや手法を学び、実践することを通して、ファシリテーターとしての経験値や対話力も身につけていったという。 「CLIPは放課後に開催されるので、いわゆるリーダータイプの生徒は部活動などの活動で忙しくて参加できず、参加したのは部活動などはしていなくて勉強もそこそこ…という、いわゆる目立たない生徒がほとんどでした。その彼ら彼女らが、CLIPの活動を通して、私たち教員も驚くほどに成長したのです。積極的に自分の意見を発言したり、グループワークを進めるのが上手になったり。目の色も表情も入学時とはまったく異なり、低かった自尊心も高まったようでした」 CLIPに参加した生徒たちの変容を目の当たりにし、「あの子たちのように他の生徒たちも地域の人と関わり、対話力を身につけてほしい」と考えた下村先生らは、2018年度から総合的な学習の時間「榛高タイム」のカリキュラムに市民ファシリテーターによる「ファシリテーション研修」を盛り込んだ。1年生の最初に2時間を使って、全員が対話の進め方とグラフィックレコーディング(イラストなどのビジュアル要素を用いて議事録をまとめる手法)について学び、その後の探究活動に活かしていく。1年生の「榛高タイム」では地域の課題探究、2年生では地元以外の地域(修学旅行先)の課題探究、3年生では大学での学び(志望校)の探究を行う。市民ファシリテーターと地域連携推進監下村武治 先生取材・文/笹原風花地域を知り、地域への誇りや愛着をもった生徒を育てたい市民ファシリテーターによる研修を総学で全員が受講地域連携によるカリキュラムの概要5月1学年2学年全学年9月7月11月2月6月10月1月8月12月3月ファシリテーション研修榛高タイム(総合的な学習の時間)希望者対象総合的な学習の日市長出前講義地域の課題探究地域の課題探究企業人講話企業訪問台湾研修研修成果発表会アメリカ研修(事前・事後)沖縄研修イングリッシュキャンプ定時制課程生徒との交流地域リーダー育成プロジェクト(CLIP)研修成果発表会修学旅行に向けての地域探究学習キャリア探究成果発表会成果発表会1900年設立/普通科・理数科・定時制/生徒数693人(男子387人・女子306人)/進路状況(2019年3月実績)大学171人・短大10人・専門学校17人・その他23人学校データ〝対話〞を重視したカリキュラムで自らポテンシャルを上げていける力を伸ばし行政・市民と共に「地域リーダー」を育成榛原高校(静岡・県立)222020 FEB. Vol.431

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