キャリアガイダンスVol.431
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出てきます。生徒の間に共通のベースがあるだけでこんなに違うんだと実感しています。また、昨年度から企業人講話に市民ファシリテーターに入ってもらい、話を聞いた後にグループワークの時間を設けるスタイルにしたところ、議論も理解もとても深まりました。話を聞いて感想文を書くだけの昨年までと比べて、衝撃的な変化でした」 一方で、課題もある。地域連携の進んだ学校だという周知がまだ足りないこと、そして保護者の理解が十分ではないことだ。 「手厚い指導を求める保護者が多いなか、生きていくためには自分で自分のポテンシャルを上げていくことが大事であり、そういう生徒を育てるために探究や地域リーダー育成プロジェクトがあるのだと伝えていく必要があると感じています。逆に言うと、今まではそうした教育をしてこなかったということです。そんな時間があれば勉強しろと、私たちが生徒の機会を潰していたのかもしれません。もちろん教科学習も大事ですが、多様な人々と関わり地域の現実を知るなかで、自らの在り方や今後について考える時間も、同様に大事だと考えています」 これまでの積み重ねや内省のうえに立ち上がったHAFプロジェクト。今後は「走りながら試行錯誤を続け、〝こうあるべき〞にとらわれず、より良いものにしていきたい」と下村先生は締めくくった。るプログラムと市民ファシリテーターによるプログラムがあり、参加回数によって修了証や認定証が市より交付される。授業でファシリテーション研修を受け興味をもった生徒は、このプログラムでさらに追求できるようになっている。 地域リーダーの育成に加え、同校では2015年度以降、文部科学省委託事業や静岡県教育委員会の事業などに積極的に取り組み、企業による出張講座、地元の企業・事業所訪問、海外研修、研修・体験型のサイエンスプログラム(理数科)など、多様な外部機関や人材との連携を進めてきた。こうした取り組みを統合・体系化するかたちで、2019年度にHAFプロジェクトを始動。「世界を見つめ地元を愛するグローカルリーダー」の育成を目指すことになった。新たに静岡大学教育学部と連携協定を結び、「総合的な学習の日」に普通科1年生が大学で研修を受けるなど、具体的な取組も始まっている。 全員がファシリテーション研修を受講するようになり、生徒には教員が驚くほどの変化が出ているという。 「探究などの授業でグループワークを行う際も、とてもスムーズです。自分たちで役割を決めて進め、ここは安心・安全の場だという対話のルールが共通理解としてあるので、意見もどんどんの連携具合は各学年担当に任せているが、年に2〜3回は授業に入ってもらう。 一方、通年のプロジェクト形式だったCLIPは、より多くの生徒が参加しやすいよう2019年度よりプログラム方式に変更。地元企業などが主催す左から、3学年の曽根 直さん、松本 恵実花さん、山下 友梨子さん。生徒に対話力がつき、議論や理解が深まる対話の手法や地域課題を学び、考え方や見方が変わった●先生に誘われて参加したCLIPでしたが、次第に活動にハマっていきました。以前は批判されたらどうしようという恐怖心から、意見があってもなかなか言い出せずにいたのですが、CLIPで相手の意見を頭から否定しないなどの対話のルールを学び、安心できる場で対話をするうちに、人の意見を聞き自分の意見を発し、人の意見を引き出せるようになりました。(曽根さん)●CLIPで学んだ対話の手法は、学校でみんなで話し合って何かを決めるときなどにも大いに役立っています。また、CLIPで多くの人と出会い、地域課題の解決のためにがんばっている大人の姿を目の当たりにし、これまでは気にしていなかった地域のことにアンテナを張るようになりました。(松本さん)●以前は人と話すことが苦手でしたが、CLIPでは「やりたい」と言ったことをみんなが応援してくれて、高校生でも発信すればやりたいことを実現できるんだと自信がつきました。大学ではまちづくりについて学び、卒業後は地元に戻って地域課題の解決に取り組みたいと考えています。(山下さん)「さいたまファシリテーション講座」に参加した生徒が描いたグラフィックレコード(写真上)。ファシリテーション研修では、生徒がファシリテーターを務めながら実践的に対話の進め方を学ぶ(写真下)。地域社会と協力し、生徒を育てる体制行政企業・団体●文部科学省 ●静岡県教育委員会 ●牧之原市 ●静岡県地域外交局 など●矢崎部品ものづくりセンター ●TDK●伊藤園 ●島田掛川信用金庫 など小・中学校●市立小・中学校 など教育機関●静岡大学 ●静岡県立大学 ●静岡産業大学 など地域住民●市民ファシリテーター学校232020 FEB. Vol.431地域を巻き込み社会とつながる学びへ実践事例レポート

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