キャリアガイダンスVol.431
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そのことばかりを考えてしまうほど熱中するような課題に出会えば、学びは加速されます。 また、教科学習で扱う本質的な問いを含んでいたり、自分の特技や持ち味を発揮することで、社会に貢献できる可能性のあるテーマであることも大切です。地域側が困っていることや実現したいことと、自分が実現したいことが噛み合っていること。さらには、実現に向けた具体的な行動を含むことも望ましく、先生方にも上記のような観点でカリキュラムを考えていただきたいと思います。 これらはすべて「尖った人材になる」ことや「多様性の中で対話的、協働的に知恵を生み出す力」を実践的に育てるために必要なことです。より多くの生徒が当事者性をもったテーマに出会うためには、より多くのフィールドが必要になります。社会課題解決と個別最適化された問いを重ね合わせるカリキュラム開発は、これからの学校の手腕にかかっています。 ここまでは、主に地域探究を通して社会に出すことの意義や価値を語ってきましたが、社会に開かれた教育課程の実現とは、生徒を地域に出すこととイコールではありません。「社会に開かれた」ということは、目的が共有され、社会でしかできないことと学校でしかできないことが役割分担されている状態です。 学校の特性は何かといえば、思考のトレーニングです。各教科で「こういう考え方をすると目的に到達できる」という思考力をつけるために、いろいろな題材を用意しています。世界のことを考えるときには、地理や世界史、英語の力が助けになります。課題を解決するための武器としては、やはり教科の力が必要になるのです。思考のトレーニングをさせるのにふさわしいスキルをもった、スペシャリストが揃っているのが学校です。 学べば学ぶほど、より良く生きていけるということでなければ学校の存在意義はないはずです。フィールドを提供するのが地域、実際に探究プロセス学校と社会が役割分担し生徒に力をつける目的が共有され学校と社会の役割分担がされている状態へ社会に開かれた教育課程の理念(文部科学省)図2❶社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を持ち、教育課程を介してその目標を社会と共有していくこと。❷これからの社会を創り出していく子供たちが、社会や世界に向き合い関わり合い、自らの人生を切り拓いていくために求められる資質・能力とは何かを、教育課程において明確化し育んでいくこと。❸教育課程の実施に当たって、地域の人的・物的資源を活用したり、放課後や土曜日等を活用した社会教育との連携を図ったりし、学校教育を学校内に閉じずに、その目指すところを社会と共有・連携しながら実現させること。高校生の地域探究 課題設定 8箇条図3❶ジブンゴトである 自分が心底「これをやりたい!」と思える。❷個性と社会のマッチング 自分の特技や持ち味を活かし、これを伸ばして成長でき、自分の個性が社会で役立っているイメージ(進路展望)をもてる。❸教科とのつながりがある 学校の諸科目と「より広く・より深く」つながっている。 (学ぶモチベーションの向上)❹探究プロセスを含む 仮説「~すると~なるはずだ」があり、これを検証できる。❺地域のニーズや支援がある 地元(個人・地域)に具体的なニーズがあり、快く支援が受けられる。(多様な人々の共感的な参加を期待できればベスト)❻実現性がある 先生や地元の方々が連絡・調整・経費面で負担感を覚えない。❼行動につながる 評論家的な提案に終わらず、知恵を絞り、汗を流すことで、課題解決に貢献できる。(提案・計画は「仮説」、行動して「検証」)❽完結する 決められた期間内に「一話完結」できる。 (壮大な構想の尻切れトンボはダメ)地域を巻き込み社会とつながる学びへ生徒の学びを“社会”と“将来”につなぐ これからの学校づくり332020 FEB. Vol.431

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