キャリアガイダンスVol.431
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392020 FEB. Vol.431誌上 進路指導ケーススタディ 予想外の出来事に戸惑う 生徒への対応は?進路選択では、時に生徒自身が思いもよらなかった事態と直面することが少なくありません。今回は、予想外の出来事を乗り越え、進路を切り開いていくための支援に役立つ理論の一つとして、シュロスバーグのトランジション(転機)理論を取り上げます。シュロスバーグの研究は、成人のキャリア発達や転機を対象としていますが、高校生の進路選択で直面する場面に共通する部分が多く、その対処方法が進路指導現場でも役立つ理論といえます。取材・文/清水由佳 イラスト/おおさわゆうこんなケース1家庭の事情で進学が難しくなったという生徒2センター試験失敗。不本意な大学に合格の生徒3職場の人間関係に悩み相談に来た卒業生第14回かりまざわ・はやと●1986年岩手大学工学部卒業後、岩手県の公立高校教諭に。早稲田大学大学院教育学研究科後期博士課程単位修得退学。教育学、教育カウンセリング心理学を専門とする。2015年4月より現職。※「転機」とは、自分の役割や人間関係、生活、自己概念などの変化が、いくつか複数起こること。そのため、「期待していた出来事が起きたとき」も転機となり、その変化により乗り越えるべき課題が発生します。会津大学 文化研究センター教授 苅間澤勇人先生 【監修&アドバイス】 人生の中でのさまざまな転機(トランジション)に関する理論を構築したのが、アメリカのキャリアカウンセラーの専門的研究組織(NCDA)会長などを歴任してきたナンシー・シュロスバーグ(Nancy K.Schlossberg)です。発達心理学の多くが人の一生の時間経過や世代に注目したのと異なり、「人は生涯を通じてさまざまな転機や変化を経験する。この転機や変化は、決して予測できるものでも、人生途上で誰もが共通して遭遇する出来事でもない。人それぞれがその人独自の転機を経験している」と、個別性に注目しました。そして転機を、「期待していた出来事が起きたとき」「予測していなかった出来事が起きたとき」「期待していた出来事が起こらなかったとき」の3つに分類しています。まさに、進路選択においても、この3つの転機を、それぞれの生徒が何かしら体験しているといえるでしょう。 そのような転機を、どう受け取るか、それにどう対処していくかが重要であると、シュロスバーグは説きます。そして、転機の対処の仕方として、Situation(状況)、Self(自分自身)、Support(周囲の援助)、Strategies(戦略)の「4つのS」を吟味していくことを提唱しました。●Situation(状況) その転機は何が原因になっているか、自分でコントロールできるのはどの部分か、長く続くものか一時的なものか、過去に同じような経験をしたことがあるか、転機に伴うストレスはどの程度か、などを明らかにして状況を把握します。●Self(自分自身) 変化に対する自分自身の心身状態や、自分自身の物の見方(楽観主義かや自己効力感がどのくらいか、価値観など)を把握します。●Support(周囲の援助) 転機を乗り越えるための周囲からのサポートとして、どのようなものをどのくらい受けられているか。また、転機によって失ったり弱まるサポートはあるかなど、周囲からの援助を検討します。●Strategies(戦略) 転機を変化させるような行動をとったり、転機の意味を変えるような試みをしているかなどをはじめ、広い範囲で戦略を実行し、どの程度できているか把握します。また、今後可能な方略なども把握します。 これら「4つのS」を明確にすることで、転機を乗り越えるための具体的な行動につなげることができるのです。図 転機とその対処方法 進路指導に役立つ理論●シュロスバーグのトランジション理論理論を活かす転機(トランジション)・期待していた出来事が起きたとき・予測していなかった出来事が起きたとき・期待していた出来事が起こらなかったとき対処方法Strategies戦略Situation状況4つのSを検討Support周囲の援助Self自分自身

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