キャリアガイダンスVol.431
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412020 FEB. Vol.431生徒:家庭の事情で進学が難しくなってきて…。先生:何があった? 聞かせてもらえる?生徒:父がリストラされたらしくて、経済的に進学は諦めてほしいって言われました。先生:そうか。それは大変だな。ちなみに、その状況はどの程度深刻なの(状況)?生徒:う~ん、まだよくわからない。とりあえず、進学の費用が厳しいかもっていうことで。先生:そうか。じゃあ、もう少しそこは聞いてみないとわからないね。ちなみに、自分はどうしたい(自分)? どうしても進学したければ、奨学金もいろいろあるので、先生も調べておくよ(援助)。そのうえで、どういう方法がとれるか考えてみよう(戦略)。生徒:センター試験失敗して、受かりそうなところに変更したのにダメだった…。先生:そうか。残念だったな。でも、○○大学には受かっていたんじゃないか?生徒:そうなんだけど。とりあえず滑り止めって感じだったから、あんまり行く気がしない。先生:行く気がしないか。ちなみに、その大学は家から遠い?学部の特徴や学費はどうなっている(状況)?生徒:意外に近いけど、あんまり詳しいことはわかっていない。先生:そうか。ところで今、どう思っている? そもそも、将来どうしたいんだっけ(自分)。将来に向けて応援してくれそうな人(援助)や、入学する・しないも含め、思い描く未来につなぐための方法をいろいろ考えようか(戦略)。卒業生: 仕事は大変なことばっかりだし、何より人間関係が最悪。みんな人の悪口ばかり言っていて、上司は全然仕事を教えてくれずにいつも怒鳴ってる…。 先生: それは大変だね。最初からそんな感じ(状況)?卒業生: 最初はそうでもなかったけど、先輩が一人辞めちゃったら大変になって…。 先生: それで自分も辞めたいと思っている(自分)?卒業生: そうですね。でも、これといってやりたいことが別にあるわけじゃないし。 先生: ちなみに、そういう嫌なことがあると、どうやって発散するの? カラオケ行くとか? 愚痴を聞いてくれる人がいるとか?(援助や戦略へ)<例えば、こんなやりとりへ><例えば、こんなやりとりへ><例えば、こんなやりとりへ>苅間澤先生のワンポイントアドバイス転機を乗り越えていくことはストレスマネジメントにもつながります『ストレスの心理学 ―認知的評価と対処の研究』リチャード・S・ラザルス、スーザン・フォルクマン著 実務教育出版トランジション(転機)を考えるうえで欠かせないストレスとは何か、その対処についての詳しい研究書。 シュロスバーグは、転機はある出来事を転機と考えることによって初めて転機になるといいます。これまでにどのような経験をしてきたか、周囲にどういうサポートがあるか、本人がどのように行動できるかによっても転機の受け止め方が変わるのです。そのため、SituationとSelfで本人がもっている(不足している)リソースは何かを見定め、SupportとStrategiesでその人のリソースを強化し、一番動きやすい戦略を一緒に考えるというのがシュロスバーグの考え方です。それによって転機を乗り越えた経験は人を成長させ、その連続によってその人ならではのキャリア発達があると考えられています。 また、転機に対処するということは、ケース3にもあるように、ストレスマネジメントの考え方にも通じます。シュロスバーグの理論を知るうえでは、前回ご紹介した『新版キャリアの心理学』がわかりやすい参考書になると思いますが、同様に、シュロスバーグがトランジションの視点の一つにラザルスの認知評価モデルを掲げている点から、今回はその書籍を参考書籍として挙げておきます。教師自身のストレスマネジメントの観点からも、ぜひ知っておきたい理論です。

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