キャリアガイダンスVol.431
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まとめ/長島佳子 撮影/景山幸一草島葉子興國高校 校長1926年創立。普通科4コースとITビジネス科を設置する男子校。難関大学進学者、国家公務員、日本代表として海外で活躍するサッカー選手をはじめプロ選手になるトップアスリートなど、生徒の多様な才能を育成している。近年は同校への専願志願者が定員を大幅に上回る人気校となっている。興國高校(大阪・私立)自分の目標に突き進む「心の習慣」をつける男子校ならではのオンリーワン教育くさじま・ようこ1960年生まれ。神戸女学院大学文学部卒。創立者である祖父、前任理事長・校長である父をもつ家系に育つ。大学卒業後は樟蔭東高校、興國高校の英語科教員を務めるが、一旦教職を離れ人材派遣会社、企業研修会社などで育成や研修企画、コンサルティングを行う。その後、PHP研究所で研修講師を務め、1997年より興國高校に理事として戻る。周囲の女子校が共学化し、同校への志望者が半減する危機から、先代校長と共に抜本的な学校改革に取り組み、屈指の人気校へと押し上げた。事務局長、副校長を経て、2013年理事長・校長に就任。大阪教育大学夜間大学院スクールリーダーコースの講師も務めた。現在も、大阪私立中学高等学校連合会副会長など外部の役職も多数務める。全国大会がかかったサッカー部の応援に、全校生徒が一丸となった姿に鳥肌がたつほど感動したと語る。 教育者にとっての普遍的なテーマとは「社会が求めている人材を育て送り出すこと」です。社会の多様な場面で貢献し、喜びを感じられる生徒を育てるために、本校はその環境を提供する学園でありたいと考えてきました。 ダイバーシティが重視される現代において、学問やスポーツに限らず、生徒たちがもつさまざまな個性や夢を実現できる男子校を目指し、「オンリーワン教育」と称して5つのコースで多様な生徒が共に学んでいます。 近年は本校への志望者の専願率が非常に高く、多数の生徒が明確な目標をもって入学してきます。入学時は自分の夢を見出せていない生徒に対しても、本校で自分だけのオンリーワンを見つけられるよう、多様なプログラムを用意しています。 高校生の時期の男子生徒は、自分から情報を取りに行ったり、想像することが不得意な傾向にある一方で、目の当たりにしたものから受ける影響力や、目標を見つけたときの瞬発力が高いと感じます。そのため、無人島でのサバイバルキャンプや、町おこし、インターンシップなどの体験プログラムを多数設けています。また、本物の多様な大人と接する機会を増やすために、五カ国語を話せる外国語教員や、大学教員、プロスポーツ選手など、高校では指導を仰ぐことのできないプロフェッショナルな教員や講師、顧問が大勢活躍しています。 本校は高校のみの3年間教育です。短期間で成長して結果を出すために最も大事なのは「心の習慣」だと考えています。挨拶をするなどの生活習慣だけでなく、目指した目標に対して日常的に必死になって取り組む姿勢です。 まず教員自身にその習慣がなければなりません。そのため、教員採用においても、何かに専念した経験を重視しています。「心の習慣」が整った教員集団は、前述のように外部のプロフェッショナルが入ってきても、互いにリスペクトし合い相乗効果を生みだしていきます。 短期間で習慣を変えることは家庭教育だけでは難しいです。本校ではさまざまな課題を抱えた生徒も受け入れていますが、保護者の方々は自分の子どもしか知らないため、「どうしていいかわからない」と悩みを抱えています。多様な生徒と触れあってきた本校には経験値があります。どんな生徒でも寄り添い、対話を重ね、「成長を信じて待つ」ことで、ある瞬間にスイッチを入れることができるのです。我々が保護者の方々から学ぶことも多くあり、学校とは、生徒、教員、保護者の3者が共に学んで成長していく場だと考えています。 少子化の時代、学校経営は難しくなると言われていますが、少子化だからこそ、一人ひとりの生徒に合わせたきめ細かな教育を創り出すことができるチャンスだと思います。新しい教育をデザインする力を全国の先生たちと共有できたらと願っています。多様な生徒が多様な個性を発見し共に学び合う環境づくり「心の習慣」をもつ教員がいてこそ目標に突き進める生徒を育成できる432020 FEB. Vol.431

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