キャリアガイダンスVol.431
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思い描いている授業の在り方目指す生徒像他の教育活動や社会とのつながり● 答えのない課題に対して、自分で考えて自分なりの答えを見出すことができる● 見て感じて考えて表現するという美術の活動を通して、自分や社会に対する理解も深めようとしている● 自分の「思い」を「かたち」にする力を、他者との対話なども通して、自身の試行錯誤で身に付ける・ 国語科と連携した授業など、さまざまな分野に美術の視点を組み合わせて、新たな創造をすることも模索中・ 地元の芸術家の題材を授業に活用(生徒にとってなじみやすくし、興味をもてば自分でも探究しやすいように)美術の授業・ どのように構想や表現をするかという答えのない課題を、生徒が考え、自分なりの答えを見出す・ 創作する作品のテーマを通して、“自分”や“社会”のことについても理解を深める・ どんな作品を創りたいか生徒が構想を練り、そのねらいを実現するにはどんな構図や技法がマッチするかも考え、美術の発想力や表現力を磨く・ 鑑賞を通じて作者の意図や技法について理解を深める美術“で”学ぶ美術“を”学ぶう生徒は、鑑賞会で見聞きした友人の作品の魅力も語ってくれた。 「石の上がゴールで、そこにたどりつく階段が2つ作られていて、段数が多いほうは一段の壁が低く、段数が少ないほうは壁が高いんです。だから『ゴールにたどりつけるよう、多くの目標をもって一段一段壁を越えたい』って。すごいと思いました」 『未来を見つめる自分』の自画像制作では、近い将来や遠い将来を各自が具体的なモノや比喩表現で表し、バラエティに富んだ作品が揃った。背景にパソコンやカルテやお花を描き、「医療事務の仕事がしたい」という夢を抱く自分を表現した生徒。背景に瞳や口を描き、「まわりをよく見て、約束を守る人間になりたい」という未来を示した生徒。そうしたさまざまな作品を鑑賞し合うことで、生徒が自分や未来についてさらに考えを深めてくれることを 「美術Ⅰ」の授業で『自分のこころ』を表現した石彫作品。生徒が自らつけたタイトルと説明文を読むと、普段はあまり表に出さないであろうことまで言葉にしていて驚かされた。ある生徒は作品に『不完全』というタイトルをつけ、「何もかも中途半端で何かを成し遂げることができず、見た目は完璧に見えても中身は不完全なところ」を表現したと書き添えた。生徒同士の鑑賞会では「少し照れくさかったけど、そういうのが形になったんだと感じてもらえた」という。作品名を『もやもや』として、「ぱっとしない性格を表現した」とい八重樫先生は期待している。 もっとも、美術の授業で構想や振り返りに力を入れるとなれば、その分、年間で絵を描いたり彫刻をしたりする時間は削られる。自画像の授業でも、絵を描いている時の生徒はとても楽しそうだったが、そうした制作時間が減ることにジレンマを感じることはないだろうか。 「美術の道に進みたくて絵の練習をしたい子が集まった場なら、やり方を変えるかもしれません。ですが、本校の生徒は多様な進路に進みます。だからこそ、生徒がさまざまな世界で活躍できるよう、『美術〝を〞学ぶ』だけでなく、考える力や自己理解のようなことも『美術〝で〞学ぶ』ことができる授業にむしろしたいのです。目の前の生徒たちは、美術を通して何を学ぶことが求められているのか。その視点から授業を考えたいと思っています」生徒はこう変わる創作や鑑賞を通して自分や未来を見つめるように2年生池川愛夏さん■ INTERVIEW 中学校の時の美術の授業は、与えられた課題に取り組むだけでしたけれど、八重樫先生の授業は、自分たちで考える時間もたくさんあって、想像を掻き立てられるところがいいなあ、と思っています。例えば芸術家の作品について、制作中の様子から映像で見て「なんでこうしたんだろう?」ということをみんなで考えてシェアしたり。自分で創る作品についても、「こころ」や「未来」のように「どう表現すればいい?」と考えるところから始めるテーマに挑戦し、できた作品に対してまたみんなから意見をもらったり。 前よりも制作する時に構図や表現の仕方をよく考えるようになりましたし、みんなの意見を聴くなかで「そういう考えもあるんだな」と知れたこともありました。物ごとを柔らかく考えられるようになったかなあ、と思います。想像を掻き立てられる授業で柔らかく考えられるようになった石彫の『自分のこころ』。不完全さやもろさや表現した作品や、「芯をもつ」「ゆったりしていたい」などありたい状態を表現した作品など、さまざまなこころの状態が形づくられた。『未来を見つめる自分』の自画像。進学や就職や留学といった進路から、「笑顔がいっぱい」「お金持ち」などの願望まで、作品によってさまざまな未来のイメージが描かれている。592020 FEB. Vol.431
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