キャリアガイダンスVol.431
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人のストーリー卒業生月から北海道庁で農業の技術職として社会人になる長谷川千夏さん。小中学校時代に不登校を経験したが、札幌大通高校との出会いが自ら人生を切り拓くきっかけとなった。 「高校に入ったら居場所づくりをしなきゃと焦って、国際的なイベント出場が多い和太鼓部に入って海外に興味をもったり、『ESDに関するユネスコ世界会議』の参加メンバーに応募するなど多数のプロジェクトに参加しました」 ユネスコ世界会議に向けて、まず学校が受け入れる短期留学生たちとのディスカッションを課せられた。 「地元・札幌の歴史について、アイヌの人たちに対してしてきた事実を踏まえて再見してプレゼンしたら、海外の人がどう感じるかをテーマにすることにしました。私も改めて地元の歴史と向き合うことができました」 3年生の秋には岡山での世界会議に参加。地球や環境について多く議論されるなか、発展途上国の生徒が発した「我々は生きることが精一杯で、環境のことまで考えられない」という言葉に目が覚め「食」や「農業」への関心が高まった。 それ以降、同校が教科の学びを地域社会に向けて発展させるために取り組む「ミツバチプロジェクト」や、「高校生チャレンジグルメコンテスト」など、実社会に即した段取りを踏むプロジェクトに参加。 「農業技術だけでなくマーケティングなども面白くなってきました。いずれも学べるよう酪農学園大学を志望し、プロジェクトの経験を活かして推薦入学で合格しました」 大学進学後、農業の実情について初めて知ることとなった。 「借金は当たり前で、ハイリスクな産業なんだと。それで、農業経済学を専攻し、6次産業化することで農家を救う方法を模索し、それに関連する仕事に就きたいと考えました」 また、充実した高校生活の反動で物足りなさを感じていた大学入学当初、高校時代の恩師の助言をヒントに学生団体を設立。ポストカードを制作・販売して売上を寄附する活動も行った。 未来が拓けた今、高校生活について改めて振り返ってもらった。 「札幌大通高校は『1回くらいつまずいても大丈夫!』と思えるくらい、チャレンジできるチャンスと環境を先生たちがあちこちに転がしておいてくれていました。高校生って何かひとつ心にとまることがあるとコロッと変われるんです。すべての経験はつながっていて、つなげてくれたのが学校の存在だったと思います」(左上)岡山で開催された「ESDに関するユネスコ世界会議」で学校のメンバーと。日本から8チームが参加した。(右上)「ミツバチプロジェクト」の販売実習。蜜蜂の飼育から商品化、販売までを生徒たちが行う。(右下)大学で自ら立ち上げた団体「酪農学園大学WAKKA」では、ポストカードの売上51万円を国連WFPに寄附した。数々のプロジェクトへの参加で食に興味を。つまずいた生徒にもチャンスを転がしておいてくれた長谷川 千夏さん(23歳) 北海道札幌市立札幌大通高校卒酪農学園大学 農食環境学群循環農学類農業経済学コース4年 41996年生まれ。小中学校時代にいじめによる不登校を経験。中学卒業後、定時制普通科3部制単位制の札幌大通高校に入学。3年生のときに「ESDに関するユネスコ世界会議」に出席。2016年酪農学園大学に入学。農業経済を学びながら、学生団体である「酪農学園大学WAKKA」を立ち上げる。2020年4月より北海道庁で農業の技術職として就職予定。開かれた学びを起点に進路を拓いた【大通高校 ミツバチプロジェクトほか】 2015年10月号http://souken.shingakunet.com/career_g/2015/10/2015_cg409_46.pdf 地域を巻き込み社会とつながる学びへ学びを起点に進路を拓いた卒業生4人のストーリー72020 FEB. Vol.431

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