キャリアガイダンスVol.432
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「当たり前すぎて、深く考えたこともない」。組織に長くいると、そういうことが意外と多いものです。例えば、「門があるから鍵をかける」というのは当たり前のことかもしれません。しかし、「なぜ鍵をかけるのですか? 誰かが入るといけないから? それとも勝手に出られてはまずいから?」と尋ねると、「えっ」という表情をされます。 新人なら「なぜ」「何のために」と聞くことが許されても、いつまでも同じような質問をしていると、「まだ、そんなことを聞くのか」と怒られるでしょう。そのため、質問がWhyからHowへ変わっていくことが普通です。ところが、そこに落とし穴がある。 私は、ビジネススクールで教鞭をとる前、三菱総研にいました。コンサルタントの特権とは、まさにWhyという質問ができることです。「なぜこの事業をしているんですか?」「どうして止めないんですか?」と、社員が考えもしなかったことや、タブーになっていることも堂々と聞ける。「何でそんなことを聞くのか」と煙たがられもしますが、案外、そういうところに改革のヒントが隠れているもの。かつては意味があったのに、次第に形骸化し、意味を見失うことも多く、本質に立ち戻るこ「本業転換」で未来を切り拓いた企業に見る改革の本質不透明さが増す時代、多くの企業では、既存の枠組みや固定概念を壊し、新しい価値を創ろうとしています。早稲田大学ビジネススクールの山田英夫教授に、自己変革することの意味について伺いました。 取材・文/堀水潤一 撮影/平山 諭早稲田大学ビジネススクール 教授山田英夫やまだ・ひでお●1955年生まれ。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(MBA)。三菱総合研究所にて大企業の経営戦略、新事業開発のコンサルティングに従事。89年早稲田大学に転じ、現在、早稲田大学大学院 経営管理研究科(ビジネススクール)教授。豊富な企業事例を踏まえ、実社会で“使える”理論の策定と実践を目指す。専門は競争戦略論、ビジネスモデル。学術博士(早稲田大学)。アステラス製薬、NEC、ふくおかフィナンシャルグループ、サントリーホールディングスの社外監査役を歴任。『ビジネス・フレームワークの落とし穴』(光文社新書)など著書多数。当たり前を疑うことでたどりつく問題の本質~企業の現場から~Ⅱ112020 MAY Vol.432

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