キャリアガイダンスVol.432
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whatwhatwhenwhenコダック山水電気シルバー精工富士フイルムブラザー工業日清紡JVCケンウッドカネボウとができるからです。 コンサルタントは、幅広い業種に明るいという武器もあります。「鉄鋼」と「食品」では社員が読む新聞は違いますから、例えば今、起きている問題が別の業界では10年前に解決していることを知りません。そうしたことをヒントとして伝えることもできるのです。 ある事象を別の既知の事象に当てはめて類推することをアナロジーといいます。問題解決において有効なことから、企業研修でも異業種からの学びを重視しています。多くの企業が社外取締役を増やしているのも、外部の知見を自社に活かすため。そう考えると、学校にも社外取締役のような換です。現実に大きな売上があり、ステークホルダーに対する責任もあるため、困難は桁違いとなります。 そのようななか、劇的な転換で知られるのが富士フイルムです。写真フィルムで世界シェアを競っていた同社は、デジカメ普及後、化粧品、医薬品分野へと舵を切りました。 こうした成功例がある一方、転換がうまくいかず倒産した企業もあります。詳しくは拙著『本業転換』(右図)に譲るとして、ここでは同じ業種、規模でありながら異なる運命をたどった企業の明暗を分けたポイントを▼転換のタイミング(when)▼何を新たな事業の柱としたか(what)に絞って説明しましょう。存在がいても良いのかもしれません。 もちろん会社と学校は違います。けれど組織である以上、似ている部分も多いはず。私のようなビジネスの専門家が教育について語るのは気が引けますが、以下、そういうスタンスで隣の芝生の話をしたいと思います。 社会は急速に変化しています。こうしたセリフは昔から言われていましたが、スピードが違います。ブラウン管から液晶を経て有機ELへの進化を挙げるまでもなく、技術革新のスピードは指数関数的に増しています。 そうしたなか企業は、祖業あるいは本業を転換してまで、変化に対応しています。祖業を変えた例は、寝具のエアウィーヴ(元はプラスチック射出成型機メーカー)、化粧品のDHC(元は翻訳会社)など枚挙に暇がありません。 ただし、新興企業が比較的規模が小さい時期に事業転換することは容易。問題は、成熟した大企業による既存事業からの撤退や、別事業への転 スポーツの試合では「勝っているときは戦術を変えない」というセオリーがあります。企業も同様、本業が安定しているときは、あえて変革しようと思いません。仮に、本業に陰りが見えたとしても、衰退は波動をもって忍び寄るため、「一時的なもの」「ここさえ凌げば」という「成熟の認識」もあって、二の足を踏みがちです。 しかし、早めに手を打たなければ次第に選択肢は減っていきます。焦ったときには気力も体力も低下している状態に。さりとて、好調なときに動こうとしても、賛同者は少ないという部外者が発する「なぜ?」の中に、案外真実は隠れている本業(売上高の50%以上を占めるセグメントと定義)の転換を行った結果、未来を切り拓いた存続企業と、うまくいかず倒産した企業の違いは何か。同様の業種・規模である、富士フイルムvs.コダック、ブラザー工業vs.シルバー精工、日清紡vs.カネボウ、JVCケンウッドvs.山水電気の4組を比較・分析した結果、明暗のポイントして浮かび上がってきたのが、when(転換のタイミング→余力のあるうちに決断したか)とwhat(何を新たな事業の柱としたか→得意分野を活かしたか)。本業転換に成功した4社(図右上)と、判断が裏目に出た4社の違いについて、早稲田大学ビジネススクール修了生の手嶋友希氏の事例研究を基に、山田教授が共著『本業転換』(KADOKAWA)で詳しく解説。本業からの転換も辞さない急速な社会変革が起きている順調に見えるときこそ変革をそれができるのがトップ122020 MAY Vol.432

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