キャリアガイダンスVol.432
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ようが、将来を思い厳しく接する。明日の治癒のために今日の苦しい検査を強いる医療人同様、信念をもって人と向き合っているように感じます。 そのうえで高校に期待したいことがあります。それは、決められたルールに従うだけの「ルールテイカー」ではなく、ルール自体をつくる「ルールメイカー」を育ててほしいということです。 日本人は国際規格やデファクトスタンダード(事実上の標準)をリードすることが不得意。マイクロソフトのような企業が力でルールをつくるアメリカや、数を頼りに国際機関で公的標準を決めていくヨーロッパとは対照的です。 さらに言えば、環境基準が厳しいドイツのような国が「××が2%以上含まれる製品は輸入禁止」と決めたとします。すると日本は1・9%の製品を作ろうとする。「ここまでなら許される」という理解の仕方をするのです。相手は、線引きせざるをえないから2%としただけで、1・9%を歓迎しているわけではありません。企業努力と言えば聞こえはいいですが、これでは国として尊敬されないでしょう。に、ナノテクや乳酸化技術は肌への成分浸透に応用。そもそも写真フィルムの主原料はコラーゲンですから、一見関係ない分野に見えて、基礎レベルでは完全につながっていたのです。 ただ、長く内部にいると、自分たちの強みは自覚しづらいもの。例えば、成田空港は現在、免税店などにおける物販収入が飛行機の着陸料等を上回っているのですが、民営化以前、そこはただの通路でした。自社の強みを活かしきれていなかったわけです。 異動して初めて元の職場の良さがわかるということもあるでしょう。 そのため折に触れ、「自分たちの組織にはどんな強みがあるのだろうか」と棚卸しをしたり、外部の目にさらしたりすることで、強みを伸ばしていく必要があると思います。 企業と学校は似ている部分もあると述べましたが、教職に就く人は志が違うと感じています。損得で語らず、顧客迎合もしません。生徒に嫌われ 誰かがつくったルールや「当たり前」に疑問をもたず、従うだけでは世界で勝てません。与えられた問いに対して、どのように(How)解くかという教育だけを続けていたら、いつまでたってもルールテイカーのまま。 そうではなく、今あるルールに問題はないか、「当たり前」というが本当にそうかと疑い、そうでないならば、よりよいルールをつくる主体になってほしいのです。その意味でも、Whyという質問を繰り返すことは極めて大事。当事者として、学校という組織をよりよいものに変えていくための第一歩にもなると思うのです。ジレンマを抱えます。 ということは、トップダウンしかないのです。ともすればゆでガエル状態にある組織に危機意識をあおれるのは、先見の明をもち、「逸脱性の特権」という、人と違うことをすることが許されたリーダーの役割です。 ただし、組織は一直線に成長するものではなく、成長と停滞を繰り返すもの。ここぞというときの決断はトップダウンで行うとしても、それが続くと、風通しは悪くなり、組織のモチベーションは低下します。先ほどまで推進力となっていた上からの力が、今度は新たな障害になるわけです。そこを克服するには、リーダー自身がスタイルを変えるか、協調型のリーダーに代替わりするか。いずれにしろ組織の成熟段階に応じて、リーダーシップのあり方を変える必要があるのです。 本業転換の明暗を分けたもう一つのポイントは、「何」を新たな事業の柱としたか。存続企業の特長は、ゼロべースで新しいことを始めたのではなく、それまで培ってきた得意分野を最大限活かしたことです。化粧品に進出した富士フイルムの場合、写真の色あせを防ぐ抗酸化技術はアンチエイジング「ルールテイカー」ではなく「ルールメイカー」になるために限られたリソースのなかで得意分野を最大限活かす「当たり前」を疑い、よりよいルールをつくる主体に未来の学校は“今日”の中にある「本業転換」で未来を切り拓いた企業に見る改革の本質

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