キャリアガイダンスVol.432
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 京都学園高校は生徒数1300人を超す大規模校だ。グローバルリーダーの育成を目指す「国際コース」、理数教育に重点を置く「特進ADVANCEDコース」、文武両道に対応した「特進BASICコース」、多様な進路をサポートする「進学コース」という普通科4コースを設置し、それぞれで特色ある教育を実践している。学校運営の方針について、佐々井宏平校長はこう語る。 「社会の動向や国の方針をしっかり捉えることは大切です。同時に、教育実践の〝主体者〞として、我々だからこそ何ができるのかを常に考え、先陣を切って新しいことに取り組む学校であり続けたいと考えています」 なかでも重視しているのが、「世界を舞台に自分の意志で行動する人」を育成するという建学の精神だ。そんな生徒を育てるためには、まず教員がそれを体現することが必要だという。 「『学校の方針だから』『校長が言うから』ではなく、教員一人ひとりが『私が京都学園を創るのだ』という当事者意識をもつことが大切。生徒のためになることは何でもやってほしい。生徒はそんな大人の姿を見て育つのですから」(佐々井校長) 山田尊文教頭も「どの先生にもやってみたいと思うことがあるはず。挑戦して失敗することより、失敗を恐れて挑戦しないことこそがリスク」と挑戦を後押しする。 そんな環境の下、教員はすすんで学校外の研修に学びに行き、新しい教育方法を模索。また自ら手を挙げて海外へ飛び、現地視察や学校連携の交渉にあたっている。「誰かが率先して実践例を作ることで、次への展開も見えてくる。大きな動きの第一歩として行動していきたい」と語る百田 洋先生も、調べ学習に近かった理科探究プログラムをてこ入れし、スウェーデンの学校を訪問して生徒同士の協働プロジェクトを実施するなど行動を起こしてきた。そうして現場主体で進められたさまざまな取組が、生徒の全国表彰や進学実績のアップなどにつながっている。 一方で、学校全体としての動きには課題感があったという。 「良い取組がなかなか学校全体に広がらず、『あのコースは特別』『あの先生だからできた』で終わってしまうことも。学校を次のステージに引き上げていくためには、教科やコースの枠組みを超えた教員の学び合いが必要でした」(山田教頭) そのための仕掛けの一つが、中高の全教職員約90人が参加して行う「教職員リトリート大会」だ。2016年度より毎年、夏休み期間中に実施し、新しい実践やその成果、国内外の研修で学んできたことについてワークショップを交えながらシェアしている(図2)。 「各先生が自らの強みを見つけ挑戦している様子から、自分はどんな方向で力を発揮していくかを考え始める先1925年開校/普通科/生徒数1329人(男子766人・女子563人)※高校のみの人数/進路状況(2019年3月卒業)大学366人・短大17人・専門学校46人・就職10人・留学16人・その他32人学校データ写真右から、校長・佐々井宏平先生、教務部・百田 洋先生、司書教諭・伊吹侑希子先生、教頭・山田尊文先生。教員の姿を見て生徒は育つ良い取組を共有し学校全体のレベルアップへ取材・文/藤崎雅子京都学園中学・高校(京都・私立)〝学校・社会をつくる主体者〞として挑戦し、学び合いSDGsを切り口に学校全体のカリキュラム改革へ各コースの特長的な取組図1建学の精神「世界を舞台に自分の意志で行動する」をまずは教員が体現国際コース建学の精神「世界を舞台に自分の意志で行動する人を育てる」●探究型プログラム 「KOA Global Studies」●イギリス・カナダ長期留学(10または7カ月)●イマージョン合宿などイベントの充実特進ADVANCEDコース●京都先端科学大学との高大連携 理科探究型プログラム 「Science Global Studies」●京都大学iCeMsによる学び体験●イギリス研修旅行(3週間)特進BASIC/進学コース●英語、数学の学び直しプログラム●クエストエデュケーションを活用した総合的な探究の時間の充実●アメリカ研修旅行(1週間)182020 MAY Vol.432

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