キャリアガイダンスVol.432
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 北海道長万部高校で、先生たちが改革に踏み出した直接のきっかけは、学校存続の危機が迫ったことだ。 2016年度の入学生が20名を切り、町に唯一ある高校が統廃合される恐れが出てきた。そうしたなか、2017年度に「校種間連携」の研究指定校となり、同研究に学校存続も賭けて取り組むことになったのだ。 だが、危機感や義務感だけで改革を進めてもうまくいかないのでは、と教頭の千葉健史先生は感じた。そこで校長先生と相談し、校内に「将来構想委員会」を立ち上げ、メンバーをあえて有志から募ったという。 「先生方に自発的にチャレンジしてもらうことが大事だと思ったのです」 集まったのは20代から50代までの年代のばらけた5人の先生。その一人、教務部長の舘 龍之介先生は、千葉先生と似た思いをもっていた。 「自分たちは何のためにどんなことをしたいのか、目的をもって校種間連携を進めないと、連携をするという〝手段〞が目的化すると思っていました」 そこで将来構想委員会では、校種間連携の話からは入らず、先生たちがそれぞれに抱いていた課題感や、学校でやりたいことを、ざっくばらんに共有するところから始めたという。出てきたのは次のような思いだ。 「学ぶ意義を感じ、社会に出てからも学び続けるような意欲を育みたい」 「生徒は素直で言われたことはやるが、自分で考えて動くのは苦手。自分から行動できるようになってほしい」 「小学校からの顔なじみと過ごしてきた生徒が多く、人間関係はせまい。多様な価値観にふれさせたい」 「自信をもてずにいるところがある。自己肯定感を高めたい」 ではそのために学校は何ができるのか。構想されたのが「まちづくりをテーマとした校種間連携」だ。まちづくりで地域の人と交流するなかで、生徒が学ぶ意義を見出し、多様性にふれ、自己肯定感も高める。とはいえ高校3年間でそれが実現するとは限らない、だから校種間連携で「学びをつなごう」。12年間を通した成長を子どもが実感し、自信を培えるようにしよう。まちづくり教育や校種間連携を漠然と行うのではなく、育成したい生徒像を見すえて進める下地ができあがった。 具体的な取組では、まずは課題感共有のために、半日を使って全教員でじっくり話し合う校内研修を数回行った。この研修は「最終的に長万部高校のグランドデザインを全員で創り、学校教育目標を見直すことにもつながった」1950年開校/普通科/生徒数73人(男子32人・女子41人)/進路状況(2019年3月卒業)・短大1人・専門学校等4人・就職7人・その他1人学校データ写真左から、教頭・千葉健史先生、教務部長・舘 龍之介先生、1学年主任・吉田修介先生学校を開き、学びをつなぎ生徒に豊かな人間関係と成長を失敗を認める土壌をつくり小中との認識共有にも努める取材・文/松井大助総合的な学習(探究)の時間の12年間の取組図1長万部高校(北海道・道立)思いを共有し失敗を認める土壌をつくり、先生たちが存分にチャレンジまちづくりをテーマに小中高大連携を進め「人と関わる力や自己肯定感」を高める人づくりからまちづくりへ~人とのつながり・新たな経験・校種間を紡ぐ~●児童・生徒は学ぶ意義を意識するようになり、 社会課題への当事者意識も高まる●「自分たちでまちづくりに関わることができる」 という実体験により、自己肯定感が高まる●多様性を認め、助け合う力が高まる※学校資料を基に編集部作成あらゆる世代の地域住民や児童・生徒が学校づくり・まちづくりに参画しTotal-Winの関係の構築を目指す小学校中学校高校キャリア・パスポートキャリア・パスポート地域の人との出会い・交流学校づくりまちづくり参画参画202020 MAY Vol.432

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