キャリアガイダンスVol.432
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希望の道標取材・文・撮影/山下久猛1979年、東京都生まれ。青山学院大学高等部、聖マリアンナ医1979年、東京都生まれ。青山学院大学高等部、聖マリアンナ医科大学卒業。多摩総合医療センターで初期・中期研修医を経て科大学卒業。多摩総合医療センターで初期・中期研修医を経て同センター外科に入職。外科専門医取得後、海外派遣に備えて同センター外科に入職。外科専門医取得後、海外派遣に備えて系列病院産婦人科で1年間の研修を行い、2012年4月からMSF系列病院産婦人科で1年間の研修を行い、2012年4月からMSFの活動に参加。2019年にMSFの同じミッションで知り合ったフラの活動に参加。2019年にMSFの同じミッションで知り合ったフランス人男性の薬剤師と共にフランス・ストラスブールに拠点を移ンス人男性の薬剤師と共にフランス・ストラスブールに拠点を移す。現在はMSFのミッションに参加しつつ、フランスでの医師免許す。現在はMSFのミッションに参加しつつ、フランスでの医師免許を取得するため勉強中。を取得するため勉強中。よしの・みゆきよしの・みゆき解決したい課題、叶えたい夢があるなら誰が何と言おうと手放さず小さな一歩から向かっていってください国境なき医師団 医師/吉野美幸 国境なき医師団の医師になろうと決意したのは高校3年生の夏でした。それまでは途上国で子どもたちに勉強を教える先生になりたいと考えていました。しかし、高校3年生、いよいよ進路選択の時期になったとき、「本当に教師の道でいいのだろうか。本当は何がしたいのだろうか」と考えました。自分の将来について一番真剣に考え、悩んだときでしたね。 その過程で、途上国では子どもの教育問題以前に、生存の問題があることに気づきました。日本では問題なく助かるような病気やケガでもまともな医療が受けられず、大人になるまで生きられない子どももたくさんいるんです。自分と同じくらいかそれよりもっと下の年齢の子どもたちが6秒に1人も死んでいるという現実を聞いて、大きなショックを受けました。私はたまたま日本に生まれたから幸運なだけで、あの死にゆく子どもたちが私自身や私の親しい人間でも全然おかしくない。そうやって自分ごととして捉えた時に、日本という世界一安心安全で快適な国で生まれ育った私がなすべきことは、医師になって、彼らの命を救うことだと思ったんです。 とはいえすでに高3の夏。これから医学部を目指すと先生に伝えると「そんなの無理に決まっているだろう。何を考えているんだ」と大反対されました。でも浪人する覚悟もしているし、勉強もより一層頑張るからどうしてもチャレンジしたいと一生懸命訴えたら、最終的には納得してくれました。そのとき、幸運にも聖マリアンナ医科大学から指定校推薦の募集が来ていたので応募したところ、無事合格することができました。 大学時代は授業についていくのが大変だったのと、学費を稼ぐため、勉強とアルバイトに明け暮れていました。多くの大学生のようにサークルに入ったり友達と遊ぶ余裕はあまりなかったです。 卒業後は救命救急や離島の医療などを経験し、外科の専門医の資格を取得しました。その後、産婦人科での修行を経て、いよいよ国境なき医師団(MSF)の海外派遣に応募して合格。しかも予想以上に早くミッションのオファーが来て、2012年4月に外科医としてナイジェリアに派遣されることになったんです。医師になって9年目のことでした。 MSFの医師になることは高校生の頃からの夢だったので、叶ったときはもちろん嬉しかったです。その一方で、同じくらい不安も感じました。派遣先の現場では手術をする判断から手術室全体の運営や術後の管理も全部一人で責任を負わなければなりません。果たしてそれが自分にできるのか、自信がもてませんでした。特に最初の派遣のときは不安でいっぱいでした。実際、ナイジェリアに赴任すると、銃や爆撃、事故などで重症を負った患者さんが突然、大勢運ばれてくるので戸惑いました。でも先輩医師やベテラン看護師にサポートしてもらいつつ、場数をこなしていくうちに徐々に対応できるようになり、自信も深まっていきました。現在まで途上国や紛争地に18回ほど赴任しています。 MSFの医師になって良かったと思うのは、病院に運び込まれてきた今にも死にそうな患者さんが私たちの処置を経て元気になってくれたと感じられることです。もちろん助けられない患者さんもいたりと、つらいことや大変なことも多いですが、このおかげで続けられるんです。 夢を叶えるために一番大事なのは、やりたいことやなりたいものを強く思い続けることだと思っています。そうすれば自分自身が努力できるし、いろんな人にお願いしたとき、快く助けてくれます。それと、大きな目標だけじゃなくて目先の小さな目標を設定することも大切だと思います。あまりにも大きな目標だけだと到達するまでが果てしなく遠すぎると感じてモチベーションを保ちにくいので、まずは小さめの目標を決めてチャレンジします。それが達成できると、自信がつくし、次の目標が見えてそれに向かう意欲も湧いてきます。このように小さな成功体験を繰り返していくことで徐々に成長して、最終的には夢を叶えることができると思いますよ。32020 MAY Vol.432
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