キャリアガイダンスVol.432
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2018年度まで滋賀県の総合教育センターで研修指導主事を務め、自らもコーチングやファシリテーションを学んできた藤村祐子先生。昨年、SSH・IB認定校である虎姫高校に現場復帰してから、校内で教員向けのワークショップを開くなど、学校に新しい風を吹かせている。そんな藤村先生はKP法で2030年の姿を描いてくれた。 「2030年の学校は、生徒だけでなく教員も保護者も、すべての人がボーダーレスで共に学ぶ場であってほしいです。みんなが自分の学びたいことをワクワクしながら学べる場。テストだってワクワクする、自分を表現できればOKというものにしたい。その時私は教員でなくても、共に学ぶ人々に寄り添えるファシリテーターでありたいですね」 藤村先生がこう発想した理由のひとつには、担任をしているクラスの生徒たちに「みんなの未来の理想の学校は?」と尋ねた問いへの答えがある。「自分で課題を設定して、先生がそれに伴走していくスタイル」「自分のための勉強がしたい」「生徒が授業をしてみたい」「保健室にいる生徒に対して、スマホなどを使用して授業を配信する」「No one will be left behind!」など、まさに生徒たちが主体的に、共に学びたいと考えていることが見えてくる。 なぜ藤村先生の生徒たちはこのように考えられるのだろう。先生は昨年の4月の始業式翌日に、「学ぶとは?」というホームルームを行っている。「学ぶ」から連想される言葉、反対語などを生徒たちが書き出し、なぜ学ぶのか、どのように学びたいのかを考えてもらい、1学期の終わりに振り返りを実施。3カ月間の自分の成長を言語化した内容が模造紙にびっしりと書かれていた。 藤村先生のモットーは「無理をしない」「自分を信じる」「勇気をもつ」。自分がいつもワクワクしていたいから、ありのままで無理をしない。自分に自信があるのではなく、何があっても、失敗しても「自分は大丈夫」と思える心があれば、生徒にも失敗を恐れず挑戦することを促せる。失敗を反省するのは大事だが、「いいところをもっと良くするにはどうするか」を考え、次にチャレンジする勇気をもつ方がより大事だからだ。「世の中も学校も『変えられる』ことを信じたい。だから学校や教育を良くするために、仲間をもっと増やしてみんなでチャレンジできる環境をつくっていきたいです」 目下の関心はIBDP*開始に伴う評価の見直し。藤村先生なら2030年を待たずに実現していそうだ。て飛躍的に成長している。そうした生徒の姿を見ることで、活動の輪を他の先生や学校全体にも広げていきたいと考えている。 10年後は47歳になっている山本先生。どんなポジションであっても、生徒たちと関わり、変化をダイレクトに感じられる第一線にいることが希望だ。 「教員が楽しんでいる学校でないと生徒たちが楽しいはずがない。自分もずっとワクワクしていたい。どんな立場でも現場にいられる職場づくりをしたいですね」 現在の自校の課題は、生徒の多様な個性を伸ばしきるノウハウが完成していないこと。未来の学校は、PBLの中で互いの個性を認め合い、輝き続けられる場にしたいと考えている。 「PBLも、プロジェクトベースから発展して、課題を生徒たちが次々と見つけてくるようなデザインベースにしたいです。それができてこそ、未来を創造する人材になれると思います」変化と挑戦を続けながら、みんなに寄り添える存在でいたい❶教員歴30年目❷教員にはこだわらない❸共に学ぶ人のワクワクに寄り添うファシリテーターの役割をしていたい2030年の私滋賀県の公立高校を歴任。教員当初は部活に注力したバスケ人間だった。2015年より滋賀県総合教育センター・研修指導主事、2019年より現職。化学科。藤村祐子先生虎姫高校(滋賀・県立)藤村先生が昨年4月に実施した「学ぶとは?」のホームルームで、生徒たちが作成したもの。*IBDP=国際バカロレアディプロマプログラム352020 MAY Vol.432

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