キャリアガイダンスVol.432
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がないので、教員も日々自分をアップデートしていかなければなりません。22世紀を描いたドラえもんの道具が、2020年に似たようなものが実装されている時代です。未来は予測不可能だということを1回しっかり受けとめて、そのうえで自分がどう行動するのかが求められる時代だと思います」 自分をアップデートするとともに、変化が激しい時代でも、先人たちが築いてきた教育の哲学や叡知を引き継ぐ不易流行が大事だと何度も繰り返す。電気自動車や、電池に使われる直流電源も100年前にエジソンが作っていた。先端技術は、昔からあったものを時代がカスタマイズしたものも多い。 「2030年の教育は、今ある教育のカスタマイズかもしれない。学びたいことを学ぶカスタムメイドラーニングをやりたいですね」 倉本先生の方針は、生徒たちに「自分なりの活動と信念をもち、自信をもって他者に説明できる人財」になってもらうこと。時代は変わってもそれは変わらないと言い切る。 さらに、2030年になくしたいものは「教育」という言葉だ。 「『教え育む』って教員視点で型にはめ込むようでおこがましい。生徒はもっと先を行きますから。『education』はいいと思うのですが、ふさわしい日本語がまだ見つからず、探し続けています」 2030年には倉本先生考案の新語が普通に使われているかもしれない。ネットの学校として話題を呼ぶN高校に昨年着任し、京都キャンパス長として活躍する倉本 龍先生。2030年の姿について聞くと、開口一番こう答えた。 「正直、全然わからないです。10年後は僕らの想像を超えている未来ですから」 大学院時代、イギリスの学習指導要領にあたるナショナルカリキュラムに「Citizenship」という言葉があることに興味をもった。また、ICTは筆記用具と同様なツールとして早くから取り入れており、教員になった当初から専門の科学とITと社会課題を融合させた取組を発信してきた。今で言うSDGsのような取組だ。 「当初は職場では変わった人扱いでした(笑)。でも、SSHや探究の授業づくりや、面白いことを多々やらせてもらってきました」 常に新しいことに挑戦する場を求めてきた倉本先生だが、時代の流れの速さに未来はまったく予測不可能と語る。 「2020年の頭で考えていても意味※各先生が写真で表現した内容の詳細はキャリアガイダンスのホームページへ広島大学大学院で教育学を専攻。京都の私立中学・高校で理科教員を歴任。早くからICTを授業に取り入れ、SSH主任など新しい授業の取組に注力。2019年、N高校の京都キャンパス開校とともに京都キャンパス長として着任。倉本 龍先生 学校法人角川ドワンゴ学園 N高校(広域通信制・私立)不易流行のバランスをもちながら、「教育」という言葉をなくしていたい❶教員歴25年目❷教員という立場を続けているかわからない❸その時に面白いと思った働き方をしていたい2030年の私「2030年は予想がつかない」と語る倉本先生が選んだ表現が、時間と空間を超えるツールとして便利なZoomでの、学校スタッフの方々とのWeb会議。362020 MAY Vol.432

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