キャリアガイダンスVol.432
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地理歴史・公民を担当する三浦 学先生は、授業に探究学習のような問いづくりを取り入れ、実社会と結びつける授業を実践している。その際のツールとしてイマココラボが開発したカードゲーム「2030SDGs」を導入。先生が描く2030年をそのカードで表してもらった。 取材当日、三浦先生は予め6枚のカードを選んでいたが(下の写真)、描く未来を語り続けるなかで12枚のカードが追加されていった(上の写真)。最初の6枚のカードは、既に三浦先生が生徒たちと取り組み始めている内容だったからだ。今までに出会ってきた人々や書籍から受けた影響、授業を変えてきたこと、生徒たちの成長などについて振り返りながら、10年後にやりたいことは、故郷の地域振興もあると、目を輝かせながら思いを語ってくれた。 転機は2011年の東日本大震災。震災の直後に、当時石巻にあった公立の女子高校へ転任することになった。 「被災して不安で寂しかったにもかかわらず、生徒たちが明るくて非常に前向きでした。震災でも彼女たちの夢は消えていなかった。むしろ、ちょっと高望みな夢でしたが、本人たちの『やりたい、がんばりたい』という意志に、『何とかしてあげたい』と私の方が背中を押された感じです」 生徒たちは三浦先生をはじめ学年の先生方の後押しで夢を叶え、「伝説の学年」と呼ばれた。石巻の学校は統合前の最後の学年でもあった。最後の学年を輝かせたいと新しい取組や学年での協働体制が生まれ、授業や部活において、生徒たちがチャレンジすることの大切さを学んだ。 また、震災から復興していく石巻の町を見ながら、「経済と社会と環境が調和しなければ、世の中は豊かにならない」と体感。そのことを生徒たちと一緒に考えていきたいと思い始めていた。数年後に発表されたSDGsに、「これだ!」と確信。参加した勉強会でカードゲームを知り、早速、現代社会や地理の授業に取り入れてみると、生徒たちが世の中の課題を自分ごと化して考えることにつながっていったという。 「カードゲームもそうですし、探究の授業も、とりあえず自分が働き掛けて回していくと周りも動き始める。地理の授業用に作った問いづくりのワークシート※を、生徒が進学や就職に向けての準備にも汎用させて利用し始めるなど、自分が新しいことを始めると、何か周りも変わっていく。だから、まだ世の中にない、見えない風を起こしながら、学校や生徒をもっと良くしていきたい。それを続けることで、過疎化している故郷の町をなんとかしたい。地域振興と学校のコラボで、2030年には本気で町をよみがえらせたいですね」自分が動くと何かが変わる見えない風を地域で起こしたい※三浦先生のワークシートはキャリアガイダンスのホームページでダウンロードできます❶教員歴32年目❷学校にどういうポジションで関わっているかわからない❸新しい何かを引き起こし、次世代に引き継いでいきたい2030年の私宮城県の公立高校を歴任し、2015年より涌谷高校、2020年より現職。地理歴史・公民担当。2030SDGsカードゲーム公認ファシリテーター。SDGs for School認定エデュケーター。三浦 学先生宮城第一高校(宮城・県立)未来の学校は“今日”の中にある2030年の私、そして学校は?372020 MAY Vol.432

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