キャリアガイダンスVol.432
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まとめ/堀水潤一 撮影/丸山 光ほしの・きよみ1976年日本体育大学体育学部を卒業し、東京都立目黒高校体育科教諭に。九段高校、墨田川高校堤校舎、飛鳥高校、富士高校教頭を経て、2004年足立東高校校長。生徒の達成感や自己肯定感を伸ばす多様な取組や生活指導、校内清掃や挨拶励行を率先して行うなど教職員の意識改革の結果、中途退学者を大幅に減らす。その後、東京都教育委員会(中部学校支援センター支所学校経営担当副参事)、白鷗高校・附属中学校校長を経て、12年に文教大学付属中学・高校校長就任。学校改革をけん引し、生徒募集の大幅な向上を果たす。18年、学校法人東京農業大学 総学校長に就任。各校の強みを活かしながら、グローバル化やプログラミング教育を推進。学校改革に道筋をつけ20年3月退職。現在は地方に移住し、人づくりからものづくりにシフト。陶芸やDIY、農作業を楽しんでいる。柔道四段。 学校法人東京農業大学は第一から第三まで三つの高校と二つの中学校、そして昨年開校した小学校を設置しています。それぞれ校風は異なるものの、実学を基本とした教育理念は重なるところが多く、今後、各校が独自の強みを発揮していくとともに、法人全体として力を発揮できるよう連携を深めていかなければいけません。そこで、2017年に法人本部に設置されたのが総学校長室(現 初等中等教育部)です。 都立高校退職後、別の私学で改革に取り組んできた私が、縁あって総学校長に就任したのはその翌年。最初の仕事は各校の現場や周辺環境を見て回ることでした。私は飾ることなく本音で言葉を交わすタイプ。現場の声を吸い上げながら、改善すべき点を忌憚なく伝えていきました。 弱みだと聞いていた点にも利点があることを感じました。例えば、駅から離れた第三高校の立地は、私には学習に専念できる最高の環境に映りました。それが学内で完結できる学習体制やフィールドラーニング重視につながっています。 最も力を注いだのがグローバル教育です。セブ島と結んだオンライン英会話システムを構築したうえで同島の語学研修を開始。クイーンズランド大学進学を目指すコースを第二高校に設置しました。また、台湾の大学進学を支援する台湾留学サポートセンターと連携し、英語・中国語の修得を目指す講座も開始。その台湾から英語教員を招きオールイングリッシュで教える授業をすべての中・高校で試行し始めたほか、プログラミング教育の導入にも力を借りています。 私は単位制普通科高校、エンカレッジスクール、都立初の公立中高一貫校など多様な学校の改革に携わってきました。その経験から言えるのは、改革で大切なのは、目の前のことから一つずつ始めていくことと、先生方と一丸となって進めること。この二つにつきると思っています。組織ですから温度差も生じますが、少なくとも同じ方向を向いていることが大切。すると学校に勢いがつき、周囲からも注目される結果、生徒に自信が生じます。それを実感することで教職員の団結が増していくのです。本学も、第三高校を筆頭に志願者が増加したことで、校内の雰囲気が変わってきました。経験上、先生方の意識が変われば学校は継続して変わります。これからの東農大各校の改革に注目してください。 私はというと、今春長い教員生活から退き、田舎暮らしを始めました。教え子も遊びにきてくれています。もともと私は現場志向が強く、柔道にも深く関わっていましたから、恩師の強い勧めさえなければ、管理職の道を歩むことはなかったと思います。悩んだ末に出したその時の判断が私にとって良かったかどうかは今もわかりません。ただ、能力がない分、先生方と精一杯教育に取り組んできた結果、多くの生徒が何かに気づき、自分の人生を歩んでいけたとしたら、その選択は間違っていなかったと思います。各校の強みを伸ばしながら全校でグローバル教育を推進同じ方向を向くことで勢いがつき周囲の目も変わる1950年東京都世田谷区に東京農業大学第一高校開校。62年群馬県高崎市に東京農業大学第二高校開校。85年埼玉県東松山市に東京農業大学第三高校開校。2005年第一高校に中等部設置。09年第三高校に附属中学校設置。19年東京農業大学稲花小学校開校。東京農業大学第一、第二、第三高校(東京、群馬、埼玉・私立)目の前のことから始める。目の前のことから始める。そして、教職員が一丸となる。そして、教職員が一丸となる。改革で大切なのはその二つだけ改革で大切なのはその二つだけ星野 喜代美学校法人東京農業大学 前 総学校長392020 MAY Vol.432

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