キャリアガイダンスVol.432
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進路指導部部長森岡辰夫先生 高取国際高校で通算5年余り進路指導部部長を務めてきた森岡辰夫先生。以前は商・工業高校などで就職中心の進路指導にあたっていたため、「ここに赴任して初めてセンター試験の願書を見た」と当時を振り返る。そのような状況のなかで始めたのが、大学や専門学校の説明会に足を運ぶことだった。 「この地域の生徒たちは、大阪のことは近いと感じているのですが、京都に出るという感覚がなく、進学先の選択肢としてもありませんでした。でも、実際は電車を使えば京都の学校も通学範囲です。生徒の選択肢を増やすために、自分の足で距離感を感じ取りながら情報を集めようと、当時は年間30校ほど訪問していました」 積極的に学校に足を運ぶ一方、生徒たちがどのような進路を考えているのかを探っていった。そこで見えてきたのは、想像以上の多様性だった。例えば国際英語科では、キャビンアテンダントなど英語を活かした職業に就きたいという生徒がいる一方、英語とは関係なく地元で就職できたらいいという生徒も少なくなかった。地元で就職を考えたときにニーズがあるのが看護医療系で、女子生徒を中心に学年全体の15〜20%弱が看護医療系を志望していた。「地元で働きたいから」という理由で看護医療系の道を選ぶ生徒、「看護医療系=看護師」と短絡的に考える生徒を見て、森岡先生の頭には、将来的にミスマッチにつながるのではないかという懸念が浮かんだ。また、希望進路別の小論文や面接の指導が担任の先生の負担になっている実情も見えてきた。 こうした課題を踏まえて力を入れるようになったのが、職業や学問を知るための進路ガイダンスだ。総合的な学習の時間のなかで全員が受ける進路ガイダンスでは、1年次は20余りの職業、2年次 7世紀、日本初の律令国家の中心地であった飛鳥地方。その高台に位置するのが高取国際高校だ。2005年に前身の高取高校(1984年に全日制普通科として開校)の改編により国際科の専門高校として誕生し、2013年には国際英語科・国際コミュニケーション科・普通科の3つの科が設置された。現在は、「磨かれた知性と豊かな国際感覚を身につけ、実社会を生き抜く強い心と人を思うあたたかい心をあわせ持つ生徒の育成」を目標に、飛鳥地域の豊富な文化遺産から学びつつ、多彩な国際交流や外国語学習を積極的に進めている。語学研修や提携姉妹校への生徒派遣、留学生の受け入れなど、生徒が世界を肌で感じる機会も多い。 進路指導においては「夢の実現 高取国際」をキャッチフレーズに掲げ、生徒が「自分は何を通して社会に貢献するか」を考える機会を1年次から設けている。生徒の進路は多様で、例年、約6割が大学・短大、約3~4割が専門学校に進学し、就職する生徒もいる。多様さ故に「一斉に話をする」ことが難しく、担任が生徒一人ひとりの希望や状況・事情を理解したうえで個別に対応せねばならず、負担が大きくなりかねない。また、生徒も保護者も地元志向・安定志向が強く、「早く進路を決める」ことを優先するがあまり、深く考えないままに進学先や就職先を決めてしまうケースもある。こうした易きに流れた判断はミスマッチにつながりかねず、その防止に工夫を重ねている。高取国際高校(奈良・県立)取材・文/笹原風花大学進学95人、短大進学25人、専門学校進学83人、就職19人就職の内訳は、民間事業所11人、公務員8人。大学進学先は関西地区の語学系・国際系私立大が中心。専門学校は看護医療系が多い。1984年創立/国際英語科・国際コミュニケーション科・普通科/生徒数706人(男子254人・女子452人)地元で働きたいから看護医療系…でいいのか?ガイダンスで職業・学問を知り、ミスマッチを防ぐ412020 MAY Vol.432

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