キャリアガイダンスVol.432
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スタッフに話を聞くことができる。放課後に30分ずつ2ターム行われるため、生徒は興味のある2分野を選んで参加する。6月には80人余り、2月には60人余りの生徒が参加することにも、看護医療系への関心の高さが表れている。 また、1年次から受講できる公務員・就職対策講座の他、小論文の添削講座(2年次〜)、志望理由書講座(3年次〜)、就職公務員面接講座(3年次〜)などを実施。いずれも外部講師による講座だが、その多くは無料で、費用がかかっても数百円程度の負担で済むように予算が組まれている。 ユニークなのが、1学期に1年生全員が受ける「集中力アップセミナー」だ。専門家を講師に迎え、アクティビティやワークを通して自分で自分の集中力を高めるための理論と実践を学んでいく。かつては部活生を主な対象とした自由参加の講座だったが、役立つ情報を楽しく学べる、モチベーションが上がると生徒にも教員にも好評で、数年前から全員受講となった。 「本校の場合、入学してすぐの1年生のなかには、勉強習慣が身に付いていない、勉強に対する主体性がない、という生徒が少なくありません。自分に自信がないと、進学先を選ぶ際も、自分が受かるところでいいや、楽な方でいいや、と妥協しがちです。そんな生徒たちに、ちょっとしたことで自分は変われるんだ、と気持ちが高揚する体験をしてほしいという思いで、集中力アップセミナーを全員参加にしています」は40近い学部系統・学問分野のなかから各自選んだ2つの職業・学問について、講座形式のガイダンスに参加する。特に志願者の多い看護医療系については、希望者に向けた「看護医療系ガイダンス」を年2回、6月(全学年)と2月(1、2年対象)に開催。看護師、理学療法士、医療事務など12種の職業やそれを目指すための進路について、大学や専門学校の ガイダンスや各種講座に加えて森岡先生が取り組んできたのが、キャリアパスポートだ。文部科学省が「キャリア・パスポート」を提示する以前から、独自のものを作成し、活用してきた(ツール1)。 このキャリアパスポートは、年3回、各学年の長期休み前(春・夏・冬)に全生徒に配布される。生徒は、学期中の振り返り、得意・不得意科目、休み中の目標・生活時間(起床・就寝・学習時間)・変化、次学期の目標、将来の夢などの項目について、休み中に記入し、新学期に提出する。「進路通信の代わりに始めたのが最初」と森岡先生が振り返るように、「大学入学共通テスト」や「アドミッション・ポリシー」などこれからの進路検討に必要な用語の解説も載せており、高校生に年の近いアスリートの言葉を紹介するなど生徒のモチベーションを上げる工夫もしている。 森岡先生がこのキャリアパスポートを始めた背景には、大きく二つの課題があった。一つは新年度の引き継ぎ問題、もう一つは生徒と保護者の希望・意見の相違だ。 「新年度に担任が変わる際に、生徒の進路希望や状況がスムーズに引き継げないことが課題でした。生徒からすると、先生や学校に伝えたはずの情報が引き継がれていないと、不信感やまた同じことを伝えないといけないという面倒くささを感じてしまいます。また、進路の最終引継ぎと保護者の意思確認を円滑にする独自のツール※ダウンロードサイト:リクルート進学総研 >> 発行メディアのご紹介 >> キャリアガイダンス(Vol.432)年2回開催される「看護医療系ガイダンス」は、職業ごとに分かれて少人数で話しやすい雰囲気のなか行われる。部活をしている生徒が参加しやすいよう、開催時期も入念に調整されている。ガイダンスでは熱心にメモを取る生徒の姿も。「うちの生徒は3年間を通して書くことに慣れていくと感じる。次の課題は、これをさらに深め、自分の意見を発信すること」と森岡先生は話す。集中力アップセミナーの講師は、一般社団法人日本集中力養成協会の集中力プロデューサーである森健次朗氏が務める。脳科学などの理論に基づきつつ、高校生が取り入れやすい実践的なノウハウも多い。422020 MAY Vol.432

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