キャリアガイダンスVol.432
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決定時期になってから、経済的な理由などで保護者が反対して生徒の希望する進路に進めなくなる、というケースもありました。もし早い段階で保護者の意見がわかっていれば他の選択肢があったのに、時期が遅いがために間に合わないというのは生徒がかわいそうで…。キャリアパスポートの進路希望を書く項目には、生徒が書く欄と保護者が書く欄を別々に設けて、下宿や入寮の可・不可も含めて必ず保護者にも記入してもらっています」 こうして、生徒・保護者・担任(学校)の三者が生徒本人や保護者の進路希望や現状、家庭の事情まで含めて情報を共有するためのツールとしてキャリアパスポートを位置付けており、生徒との個人面談や三者面談の際にも活用している。「面談も、『君は将来何がしたいの?』ではなく『へぇ、君はこんなことに興味があるんやね』という一歩踏みこんだところから入れるので、生徒との関係性を構築していくうえでも大きなメリットがある」と森岡先生。他の先生たちにも好評で、広く意見を取り入れながら項目などは年々ブラッシュアップを重ねている。 「生徒が書いたものを読むと、結構しっかりと考えて書いているなという印象です。進路ガイダンスのときも、メモをとる姿がよく見られます。自分の頭で考えること、そして、考えたことをまとめて書く、話す、伝えるという表現力は、社会に出てからもとても大切になる力です。こうした力を伸ばすために、教科学習だけでなく進路指導を通して何ができるかを、これからも追求していきたいと考えています」ツール1キャリアパスポート(2020年度「冬」1年生用) キャリアパスポートはA4両面印刷が1シートになっており、1年生用と2・3年生用で項目が分かれている(3年生は「冬」ではなく「学年末」となる)。プライバシー保護のため、平時はファイルに綴じて管理している。※1年生用「春」「夏」や2・3年生用についてもダウンロードできます。 一方、考えの深さが足りないことを、課題に感じている。「考える=決める、ではない。早く進路を決めたいという気持ちはわかるが、そこで楽な方に流れるのではなく、本当に自分が進みたい道は何かを考えたうえで選んでほしい」と森岡先生。公務員試験に受かった生徒に対しても、「(公務員になるかどうかを)決めるのは最後でいい」と声をかけている。最後は、「ミスマッチを防ぐためにも、生徒にじっくりと考えさせる進路指導を続けていきたい」と締めくくった。 進路ガイダンスへの参加やキャリアパスポートの作成を通して、1年次から自分の将来や進路について考え、それを言語化する機会があることで、「自分の頭で考えるきっかけになっている」と森岡先生は感じている。実際、「高取国際高校の生徒は、学校の資料請求の動きが他校の生徒に比べて早い」と外部の人に生徒の意識の高さを評価されたこともある。本当に進みたい道をより深く考えさせる指導へ※先生・生徒の所属・学年などは取材当時のものになります432020 MAY Vol.432

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