キャリアガイダンスVol.432
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選択肢の中から、目的に沿って選択することです。どれが目的の実現に向けて有効かということを、優先順位をつけたり、時には統合したりしながら、数を絞り込みます。 つまり、「発散」「収束」の手続きを経たうえで、その過程を基に根拠を論理的に整理したものが「理由」であり、それを基にした設問に対する回答が「意見」になります。 なお、私は設問に向き合い思考する場面と、その内容を文章として整える手続きを分けることを推奨しています。答案作成時によくありがちなのが、思いつくままに原稿用紙のマス目を埋めていこうとするケースです。そうなると発散が不十分なままに主張の方向性を定めることになったり、そもそも発散と収束の過程を踏まずに感想を述べるだけで終わったりします。設問に対する意見や理由を考えるにあたり、多様な選択肢を検討したり、意見や理由の妥当性を検討することなく答案を作成するのは危険です。ですから、思考を発散・収束するワークと、「意見」「理由」を構築するワークは分けて実施しています。 発散・収束を促すため、ワークの冒頭で「駆動質問(driving question)」を生徒に投げかけます。生徒が探究サイクルを回して解決方法を探る支援をするために、教師が示す問いのことです。つまり「問い(駆動質問)の提示―発散―収束」の一連の手続きを「②発散・収束のワーク」と呼んでいます。 使えるコマ数によって、前述の授業モデルを基に、講座全体をデザインします。 ②は制限時間によってワークの数を決めます。なお、1つのワークにつきおおよそ20〜40分は時間を要します。ですから、例えば1コマ50分であれば1つできればよい、というくらいの余裕をもたせます。120分あれば、ワークは3〜4つ程度行えます。 「②発散・収束のワーク」では、学習者に「デザイン思考」を身に付けてもらうことを目的としています。デザイン思考とは、デザイナーがデザインをする過程で行う思考のことで、実践的・創造的な問題解決を行う手法です。IDEOのデビット・ケリーがビジネスへ応用したことで有名になりました。 デザイン思考は一つの問題を解決することではなく、問題に関わる現在と未来の条件を考慮し、複数の解決方法を探究していきます。私はこれを応用し、小論文を書くうえで大切な「考える」というプロセスのなかで、「発散」「収束」というデザイン思考の基本になる手続きを踏んでいます。大学入試では、この発散と収束の手続きを受験会場で再現でき 「意見と理由」を考える授業を紹介するために、まずは、私の基本的な授業モデルをご紹介します。 右記のように、私の講義の特徴は、「②発散・収束のワーク」を毎回実施している点です。「発散」「収束」は後述する「デザイン思考」やPBL(Project Based Learning)、小論文執筆において大切です。 発散とは、問いに対するさまざまな選択肢をつくることを指します。そもそも小論文の設問に対する主張の方向性は数多くありますから、主張を思いつく限り想定して吐き出し、より良い「意見」「理由」を導くための選択肢を準備します。 一方、収束とは、発散によって生まれた発散と収束が意見と理由の基となる「駆動質問」によって探究サイクルを促すデザイン思考の定着がワークのねらいAO・推薦指導で実績を残してきた“カンザキメソッド”開発者、神﨑史彦氏による連載。第2回目は、小論文に必要な「根拠」「意見」「提案」 の三要素のうち、「意見」をもつための授業と、その授業設計の背景にある理論の一つ「デザイン思考」を紹介します。① アイスブレイク・チェックイン(10〜15分)② 発散・収束のワーク(1つのワークで20〜40分)  (1)問いの提示  (2)発散  (3)収束③ 授業全体のリフレクション・  チェックアウト (10〜15分)④ ホームワーク(小論文執筆)462020 MAY Vol.432

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