キャリアガイダンスVol.432
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思い描いている授業の在り方目指す生徒像他の教育活動や社会とのつながり● 生徒が時間を忘れて、思いついたことを誰かと話したくなるほど、数学を楽しむようになる● 目指す生徒像を堀内先生が描くのではなく、生徒一人ひとりが自分で考え、やりたいことに取り組むなかで、 その生徒ならではの成長を遂げる・ 教科の授業の在り方について、探究活動とのつながりも意識しながら、教科の枠を越えて先生同士で議論・ 学級経営や進路指導でも、「こうすればいい」と指導するのではなく、生徒が自分たちで考えることを重視数学の授業・ 一つの問題に対して、一つの解法ではなく、複数の別解づくりに挑み、知識を柔軟に活用する・ ある場面で自力で粘るか、仲間と話し合うか、先生の話を聴くか、ICTを使うかも自分で選ぶ・ 授業外に動画を視聴するほか、授業冒頭のチェックテストと解説で、生徒が基礎を学ぶ・ 「既存知識を『応用』し、そこでの気づきや疑問から生徒が必要な『基礎』を学ぶ」授業も模索中応用に挑む基礎を学ぶを作成します。『過程がわからずグラフだけ描けてもダメ』という人もいますが、僕の見方は違うんです。式をグラフにする過程を楽しみたい生徒は自分で計算し、そこから気づきを得る。既にあるテクノロジーを使いたいと思う生徒はグラフ作成ソフトを駆使し、『複雑な式でも見ただけでグラフの形を想像できる感覚』を養う。その感覚は人類史上初めてもち得るもので、数学の世界に新たな革命を起こすんじゃないか、と思うのです」 なお、8年前から生徒が自分で考える授業に変えていっても、定期テストや入試の実績は下がらなかったそうで、だからこそ続けてこられた一面もあるという。 そのうえで堀内先生は、授業をさらに変革しようとしている。今までは「『基礎』を学んでからそれを『応用』する」と 授業の感触については、堀内先生は、授業終了時に「もう終わり?」という顔をする生徒や、休み時間中も問題を解き続ける生徒がいるかどうかでチェックしている。実際、今の授業形態にしてからそうした生徒は増え、授業後に個別に質問や意見をぶつけにくる生徒も増えた。 ICTなどを駆使する生徒の「どうなるかわからない」成長も楽しみだという。 「以前まで複雑な式は、微分などの計算をしないとグラフを描けませんでした。今は式をPCに入力すればソフトがグラフいう流れだったが、今後は「既存知識を『応用』して考え、そこでの気づきや疑問から新たな『基礎』知識も学ぶ」という逆の流れも増やしたいというのだ。PFL(Preparation for Future Learning未来の学びの準備)に通じる発想だ。 「生徒に自身の土台となるシステム、OSを書き換えてほしいんです。『インプットされた知識だけ使って考える』OSから、『やりたいことに応じて、アプリケーションをインストールするように、自ら知識を探究する』OSに。そのためにどんな授業をすればいいかは、まだ模索中で、同僚や生徒から意見をもらい、自分も学びながら、授業をゼロからつくりたいと思っています。これからの教員は、『教える人』から『共に学ぶ人』に変わる必要があると思っています」生徒はこう変わる自分のやりたいことから学びを探究し、成長する■ INTERVIEW嶋多さん「授業のあとで先生に話にいったのは、友達と思いついた解き方があったからです。中学ではテストが赤点ギリギリなくらい数学が苦手でしたけれど、今は授業が面白いです。堀内先生の授業は、中学までの『この問題はこう解く』という授業と違って、一つの問題に対して『このアイデアを使ったらどうか?』とみんなで解き方を探していく感じで、そこが楽しいんです」黒木さん「動画を見て授業を受けるシステムは、見忘れたりするし、最初は合わないと思っていました。だけど、動画だと自分のペースで学ぶことができて、授業に遅れても後で見返せるので、やれば身につくとわかってきて、今はいいな、と思っています。堀内先生の授業はただ問題を解くというより、論理的に考えるような感じで、いろいろな物事を考えるのに役立つと感じています」中原さん「前まで数学の授業がどんどんわからなくなっていたのですが、今は動画を見てついていけるようになりました。堀内先生が『これを覚えよう』ではなく『この公式はなぜこうなったか』から話してくれるので、理解もしやすいんです。先生の説明中、自分で問題を解いていてもいいんですよ。私も今日は、あともうちょっとでわかりそうだったので、自分の世界に入っていました」野尻さん「数学は得意だと思っていたけど、堀内先生の授業を受けてから『好きだけどまだ甘い』と思うようになりました。前までは、問題を解いては答え合わせをする感じだったのに、今はより本質的というか、問題へのアプローチの方法から自分たちで考えていくので。考えることを重視した授業で、数学だけでなく、今後生きていくなかで必要なことを学んでいるように思います」あともうちょっとでわかりそう!自分で、みんなで考えるから楽しい左から、嶋多七海さん、黒木嶺さん、野尻彩華さん、中原未来さん。※先生・生徒の所属・学年などは取材当時のものになります572020 MAY Vol.432

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