キャリアガイダンスVol.433
17/64

 教育委員会が県内の公立高校にICT機器やWeb会議システムを提供している岐阜県。大垣西高校はそれを有効活用し、先生たちによるオンライン学習と、スタディサプリ(以下、サプリ)を複合的に組み合わせた時間割に則り休校期間中の学習を進めてきた。 種おいだ田教頭がこうした取組を検討したのは、休校期間が長期化の様相を呈したことがきっかけだった。 「3月の休校時は、生徒たちに課題のプリント等を配布していました。しかし、生徒たちにとっては出された課題をこなすという受け身の学習=〝Study〞にすぎず、一時的な対応と考えていました。休校が長期化し始めたとき、自宅学習でも生徒たちが主体的に学べる〝Learn〞にしなければと考え、ICTを活用した学習方法を検討しました」(種田教頭) そこで学校として掲げた方針は、①いつでも通常授業に戻れるように時間割を組むこと、②学校としての機能を守るために、受験科目以外も入れること、③生徒にきめ細かく指導すること、④先生たちの負担増にならないこと、という4点のみ。進め方の詳細は現場の先生たちにすべて任せ、④を見据えて、以前から導入していたサプリを時間割に組み込んだ。 「授業構成は教科・学年それぞれで検討が始まりました。教科書学習を軸とし、その進行に合う動画講座を予め教員が見て、どの講座のどのチャプターを視聴すべきか学習方法を授業ごとに指示したり、動画講座の疑問を教員とのオンライン学習で解決するなどです」(小谷真弓先生) オンライン学習に不慣れな当初は、生徒たちが授業を理解できているか反応がわからないこともあった。また「友達がどれくらい勉強しているか気になる」などの生徒からの声もあった。 「サプリのメッセージ機能やアンケート機能を使うと、生徒の『わからなかった』などの正直な声を聞けたり、不安や気になることを簡単に共有できました」(小谷和也先生) 年間指導計画を基に、教科や学年ごとの進捗状況を見ながら週単位で学習計画を設計してきた同校。先生方からは、サプリの動画講座を併用することで、双方向のオンライン学習は生徒の理解を補強したり興味を喚起することに特化できたり、生徒のフォローに時間を使えたという声もあった。 こうした学習計画を組むことで、生徒、教員とも主体性が高まったと種田教頭は語る。 「自分の弱点克服のために、教員が指定した講座以外も視聴したり、同じ講座を繰り返し視聴するなど、自分自身の学びを調整する生徒が出てきました。先生たちも動画講座から授業法を学んだり、自身の授業と組み合わせることで新たな方法を考案するなど、授業改善に取り組むようになりました」 授業だけでなく、卒業式や部活をはじめすべての学校活動が縮小や休止に追い込まれた。それを断腸の思いで受けとめてきた種田教頭は、生徒たちにとって1度しかない「今の学年」でできることをどんな方法でも経験させたいと考えている。 「この先も生徒たちの人生には思い通りにいかないことが多々起こるでしょう。そのときに、厳しいことを憂いていても仕方がありません。解決策や、自分にできることを考える人になってほしいです。だからまず学校や教員がそれを見せたい。休校という苦しみのなかでも必ず一筋の光はあります。この期間に生徒、教員ともに確実に付いた『生き抜く力』を今後も伸ばしていきたいと思います」(種田教頭)(前列左から)小谷和也先生(進路指導主事)、種田昭彦先生(教頭)、小谷真弓先生(理科・教務主任)、(後列左から)安藤玉緒先生(国語)、水谷哲也先生(数学)、澤藤奨平先生(英語)教員の負担増にならず、生徒の主体性を育む学習支援を検討厳しい状況下、生徒も教員も『生き抜く力』が育っている取材・文/長島佳子1980年設立/普通科/生徒数631人(男子292人・女子339人)/進学型単位制で2年次より自分にあった科目を選択学校データ大垣西高校(岐阜・県立)動画講座と双方向授業を複合的に活用、逆境をバネに生徒も教員も「生き抜く力」を磨くReport44月(上)と5月(下)の時間割例。青と黄色の色つきがオンライン学習、無色がサプリ。5月中旬に回線増設によりオンライン学習が増加。毎日、体育として「体づくり」の時間も設けている。生徒たちは何を思い、教師はどう動いた? そして、見えてきたもの生徒の学びを支える実践事例172020 JUL. Vol.433

元のページ  ../index.html#17

このブックを見る