キャリアガイダンスVol.433
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 3年前から、教科主任や進路指導部を中心とした「学びのデザイン委員会」でこれからの学びについて検討してきた百合学院。進路指導部長の内橋先生が作成した「休校中の学習支援の方針」を軸に、先生たちが次々と新しい取組にチャレンジし始めている。 休校要請後に、日々状況が変わるなか、百合学院の現場も混乱していた。それでも、休校中の対応を決めるに当たり、学校としての方針が必要だった。「会議をする時間もとれず、ほぼ自分の思いで『休校中の学習支援の方針』を作りました」(内橋先生) それが、①生徒が学びを通じて学校、教師、友人とつながっていることを実感できるようにする、②課題に対して自ら取り組む姿勢を養えるようにサポートする、③個々のつまずきを把握し、個々の学びをサポートする、の3項目だ。具体策として、Zoomをはじめとしたオンラインツールの利用を提案し、次々にマニュアルを作ってサポートした。多くの先生が未経験で、当初は現場に戸惑いもあったという。 「私はキャリアが浅く、自信のなさから後ろ向きでした。でもやってみると楽しくて、いろいろな授業に挑戦してみたくなりました」(改かいはつ發先生) 「職員会議で方針を伝えた内橋先生は、生徒に対する思いがあふれ出ていました。今までは新しい取組について必ずしも全員の足並みが揃ってはいませんでしたが、みんなが『やらなければ』という気持ちになれました」(大平先生) 改發先生は入学直後に休校となった1学年担当。初めての担任で不安のなか、オンライン授業に対し「すごく楽しかった」「クラスのみんなと話せて嬉しかった」などの生徒からのフィードバックに驚いたという。 「まだ1回しか会っていない級友にクラスメイト意識をもってくれたことが嬉しくて、担任をがんばれそうだと思いました」(改發先生) チアダンス部の顧問でもある大平先生は、オンラインでの部活動も始めた。同部が目的で入学する生徒も多いため、活動停止による心理的影響を心配したからだ。学年縦割りのグループで、通常通り生徒主体でトレーニングメニューを作り先輩のお手本を見て練習。最後は座談会で振り返る。3学年にとって最後の大会の中止が決まったときも、Zoomで顔を合わせて話せる場があったことがよかったと大平先生は振り返る。バスケ部顧問の改發先生も、チアダンス部をお手本にオンライン部活を開始。保護者からも「部活があると休校中でも生活が締まって良い」と好評だ。 オンラインでのホームルームや授業でも、内橋先生の方針に則った取組が増えている。吉川先生は、ホームルームで生徒たちのやりたいことを募集。「医療従事者の方々のために何かしたい」と発言した生徒たちの声をもとに、一人1アクション、社会のために何かやろうというプロジェクトをスタートさせている。また、先生たちの協働性も高まり、吉川先生と改發先生がコラボして、宗教と現代社会のクロスカリキュラム授業も実施した。 「生徒のためでもあり、尊敬する吉川先生の授業手法を学ぶ、自分のためでもありました」(改發先生) 「通信環境の不具合など課題は山積みです。それでもオンラインで顔が見られることで、教員、生徒ともお互いに力をもらっています。機器の操作などを含めて協力して授業をしていくなかで、教員同士が授業観を語り、生徒にとってより良い授業について議論することが多くなっています。この機会に生まれた学校の一体感でさらに前進していきたいです」(内橋先生)新しい挑戦への食わず嫌いやれば楽しさと価値がわかるオンライン部活動で、生徒の心や生活リズムをフォロー(写真左から)大平麻美先生、吉川晶子先生(2学年学年主任)、内橋朋子先生(進路指導部長)、改發あゆみ先生。(上)チアダンス部の部活の様子。同部ではOGを招いての、オンライン進路相談も実施した。(下)吉川先生と改發先生が実施したコラボ授業。宗教と文化や社会との関わりを示し、宗教を身近に感じさせる授業となった。百合学院高校(兵庫・私立)授業も部活もチームワークで生徒に伴走、再確認した〝きずな〞の大切さReport5取材・文/長島佳子1950年設立/普通科(女子校)/生徒数258人/キャリア教育優良校(2018年)、優秀教職員(組織)表彰(2019年)学校データ182020 JUL. Vol.433

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