キャリアガイダンスVol.433
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 自分と社会の幸せをデザインできる「Happiness Creator」を生み出すために、「自律型学習者」の育成を最上位目標として掲げている新渡戸文化学園。休校期間中でもその目標に向かって同校が実施してきた取組について、統括校長補佐である山本先生に伺った。 「今我々は、何もない大きな部屋を与えられた状態で、そこに何を入れるのかを問われているのだと思います。今まで当たり前だと思っていた『生徒がいて、みんなで一斉に活動する学校』がリセットされてしまった。逆に言えば、自由に何でも入れられる部屋が目の前にあるのです」 まずは、家で授業を受けられる環境の整備からスタート。デバイスを持っていない生徒には、学校からタブレットやPCを貸与。4月6日からオンライン授業を開始している。 休校期間中は、それまで1日7時間制だった時間割を、1日3〜4時間、1コマ45分とし、今までの1週分を2週間で回してきた。このことで、授業の遅れの不安はないという。 「今まで学校でやっていたことをただオンラインに置き換えるのではなく、発想の転換が必要です。スタディサプリなど良質な映像教材が多数あり、今回を機に取り入れている先生も大勢います。教員の役割は、生徒が継続して考え続けられる問いを投げかけることや、生徒が自ら学びたくなる授業をデザインすることだと思います。誰でもどこからでも繋がれるオンラインの長所を生かせば、外部のさまざまな講師に話してもらったり、教科横断のクロスカリキュラムも簡単にできるので、生徒たちが興味をもって授業に臨んでいます。余白の時間ができたことで、生徒たちの方から『やりたい』ことが出てきています」 例えば高校では、休校前から計画していた朝の生徒たちとの哲学対話の時間に、コロナ禍や休校を受けて「安心とは?」について、生徒たちに自由に発言してもらった。さらに生徒たちから、「コロナの不安を解消したい」という声が出た。不安の原因は「知らない」こと。そこで「コロナについて知ろう」という活動が始まり、調べてわかったこと、感じたこと、今必要な学びを共有。その過程で目の前の課題を解決するために必要な力は何かを考え、「その力をつけるために学ぶ」というマインドセットをもって、教科の授業にも臨むようになった。また、「自分たちの学びを大切な人に伝えたい」と、生徒たちが思いを表現したものを、学校のホームページで発信するに至った。 場所の枠を取り払うオンラインは、保護者ともつながりやすくなる特長もある。実際に同校は年度始めにオンライン保護者会を開催しており、生徒が自宅で受けている授業を横で保護者が見ていることもある。なかには、生徒同士の話し合いが消極的な様子を見て、保護者に「無駄な時間なのでは?」と言われた生徒もいたという。 「生徒主体に任せる授業をしていると、そう感じる保護者もいらっしゃいます。その場合は『教師からお尻を叩かれないと勉強しない子にしたいですか? それとも自分から学ぶ子にしたいですか?』と意向を尋ねるんです。保護者はお尻を叩くことがあってもいい。でも学校はプロとしてブレずに、自律して学べる生徒を責任をもって育てていくと伝えています」 理念はブレさせず、保護者とも丁寧なコミュニケーションで目線を合わせながら、新しいツールを生かした新たな発想での新渡戸学園のチャレンジは続く。今までの当たり前がリセットそこで何をするかが問われるオンラインで保護者が身近により密なコミュニケーションを山本崇雄先生。統括校長補佐。英語科教諭。都立中高一貫教育校を経て、2019年より現職。自律型学習者育成のイメージ。教員は生徒の状況把握や目標設定のために声がけで支援。自ら学びの手段を考えることを促す。新渡戸文化中学・高校(東京・私立)保護者も巻き込みながら「自律型学習者」を育成ブレずに取り組む学校目標を軸にした学校づくりReportReport7取材・文/長島佳子1927年創立/普通科/生徒数131人(高校:男子52人・女子79人)/普通科の中で特進医療理系、特進文系、美術、音楽、スポーツ、クッキングの6コースを擁す学校データ202020 JUL. Vol.433

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