キャリアガイダンスVol.433
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学校で「探究」が求められるのはなぜか。簡単に言えば、「変化の激しい社会における正解のない複雑な課題に対して、知識をフル活用し、自ら考え判断し、他者と協働しながら最適解、納得解を導き、行動する力」が求められるからです。まさにそれがつきつけられたのが今回の新型コロナウイルスの感染拡大でした。「変化の激しい社会」といった言葉が悠長に感じられるくらい、深刻で答えの見えない課題です。 高校生の目には、変化に対応しきれず右往左往している大人の姿だけではなく、医療従事者をはじめとしたさまざまな人々が力を合わせ、アクションを起こしている様子が焼きついたで「まとめ・表現」という探究のプロセスを回すことで構造化された知識は先々まで定着することは明らか。一夜漬けで覚えた知識はすぐに忘れさられてしまうのとは対照的です。 探究が必要とはいえ、人と密に関わる学びはできません。そのためオンラインの活用が一つのポイントになります。例えば「課題の設定」や「情報の収集」においては、資料にあたるだけではなく、関係者の話を聞くことが大切であり、その点オンラインを使うことで物理的な制約なく社会課題に取り組む専門家などから話を聞くことも可能になりました。教室になじめなかった生徒がオンラインだと発言しやすいこともあるでしょう。 特に「課題の設定」は、その後の進路にまで影響を与えるため、これまでは時間をかけ、問いが生まれてくるのを待っていたところもありました。ところが今回、そうした余裕がないわけです。そのため教師の意図的な働きかけが、より求められます。生徒の関心に合わせた、あるいは微妙にズレを生むような声かけを行い、内なる問いが顕在化するよう設計をする必要しょう。自分自身、どう対峙すればいいかを日々考え、行動に移した生徒も多いはずです。「学校に集まって勉強するってどういう価値があるのか」「自分には何ができるだろう」という思索も巡らしたと思います。それも一つの探究であり、数カ月前とは違う学習者としての姿勢をもったと思うのです。だとするなら、学校が再開された瞬間、「社会課題の解決など先のことだから、まずは受験に向けて問題集を解きなさい」というのは、普通に考えて成り立ちません。現実の課題に目をつぶる学校は、ポストコロナの社会を生き残れないとさえ思います。 もちろん、どのようにカリキュラムを組み直し、学びを進めるかといった現実的な問題はあるでしょう。ただ、「課題の設定」「情報の収集」「整理・分析」今のような困難な状況に立ち向かうために「探究」はある探究田村 学 (國學院大學人間開発学部 教授)答えのない課題に対して最適解を導き出すことが「探究」という学びの一つの目的。まさに今、その力が試されている授業、探究、地域連携…学びを進化させる―今できること、今だからこそ考えたいことオンラインも活用しながら探究プロセスを回す取材・文/堀水潤一 撮影/西山俊哉262020 JUL. Vol.433
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