キャリアガイダンスVol.433
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個性を認め合い、協働する子どもたちを育てるため学校と教員も「違い」を発揮し、できることから始めようドルトン東京学園 中等部・高等部 副校長 安居長敏 新型コロナウイルス感染拡大を防止するための長期休校措置で見えてきたことは、社会の急激な変化の中にあっても頑なに「変わってこなかった学校」の限界である。既存の枠組みやオペレーションでは、もはや対応しきれないということが白日の下に晒された。 そんななか、全員が学校に集まって学ぶという画一的な「教室型一斉授業」に代わり、「オンライン授業」が一気に脚光を浴びた。これまでの授業をそのままオンラインで代替することはできないが、時間や場所に制約されない学びが可能となる。これまで二の足を踏んでいた学校や先生が実際に続々と取り組み始めた。 中1からBYOD(Bring Your Own Device)のノートPCを全ての授業で使っている本校も同様だった。生徒・先生とも在宅でオンライン授業を行う形に切り替え、朝礼や終礼、授業、学年集会、探究(ラボ)活動、オフィスアワー、養護教諭とスクールカウンセラーとの談話室、三者面談などさまざまなことを、段階的に拡充しながらオンラインで実施した。 この4月に着任したばかりでいきなり中1の担任になった先生も、不安とともに生徒と向き合った。いろんな先生たちと練習を繰り返して準備しつつ、「Zoomを華麗に使いこなすことより、入学間もない生徒の『安心感』に集中しよう」と覚悟。そして迎えた緊張の初ホームルーム。使い慣れないパソコンに戸惑う生徒が多いなか、パソコンが得意な子たちがZoom越しにキーボードを映したりして教え始めた。その後も、いろんなところで引っかかりながら、その度にクラスで生まれる協働。「クラス内はなんだか良い雰囲気。一週間で、オンラインだけでここまでなるってすごいなあ…」。生徒の柔軟な発想と対応に、目からウロコだったという。 本校に限らず、こういった場面は多くの学校で見られたに違いない。緊急事態に直面したことで、これまで失敗を恐れてやらなかった先生や周囲に合わせようと個性を封印してきた先生たちが、いきいきと自分を発揮し始めた。「何が正しいか」ではなく「生徒のために何ができるか」を考え、今の状況でできる最善を「やってみる」ことを繰り返しながら、どんどん修正していった。特別寄稿2解き放たれた、先生たちの個性混乱のなかで生まれる協働もあった302020 JUL. Vol.433
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