キャリアガイダンスVol.433
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一斉休校でより鮮明になった、学校と社会がつながり子どもたちの育ちを支えていくことの重要性認定NPO法人カタリバ 代表理事 今村久美 先に発令された全国一斉休校を受け、突如学校に集まれなくなった子どもたちの居場所を確保するため、カタリバ内外の力を借りながら突貫工事で作り上げ、3月4日にスタートしたネット上の居場所「カタリバオンライン」。この新しいサービスへの会員登録は5月には1800名を超え、休校中の子どもたちやボランティアの大人たちが日本全国、世界各地から毎日延べ100名ほど利用してきました。毎朝・夕に開催しているホームルームのような「サークルタイム」では「おはよう〜」と声を掛け合いながら、今日の調子を確認したり、今日一日どう過ごすか考えたりしています。日中の過ごし方は子どもに任せていて、「カタリバオンライン」のプログラムに参加するもよし、学校からの課題に取り組むもよし、遊びに行くもよし、やることがない…という子はキャストと呼ばれる大人と雑談することもできます。 「カタリバオンライン」がスタートしてから数か月、オンライン上ではじめましての子どもや大人が集まり活動をするという新しいコミュニティ運営を実際にやってみたことで見えてきたことの一つは、「カタリバオンライン」が既存の学校教育システムでは救えなかった子たちが参加できる場になっているということです。 学校での学習スピードに追いつけない、あるいは吹きこぼれていた子どもたちが、AI型ドリル学習によって各自に最適な学習内容をそれぞれのペースで学んでいたり、不登校だった子が毎日参加して昼夜逆転生活が改善されたり、学校に行っていても周りに話しかけることができなかった子が、画面を通すとなぜか声が出せ、全国に異年齢の友達ができていたりする。「カタリバオンライン」はもちろん万能ではありませんが、病気や家庭などの様々な事情で学校に通えない子どもたちにとって、新たな可能性をもつ居場所になっていると感じています。 また、子どもや保護者から寄せられる声からは、子ども自身が自分の学びをデザインする主権を得た喜びも伝わってきます。これまでの学校制度は、たまたま生まれた地域の学校に通い、たまたま配置された担任やクラスメイトと学生生活の大半を過ごすようにできていて(一部、私立やオルタナティブスクールなど学ぶ環境を積極的に選択することはできたとしても)、学ぶ環境に対する子ども側の選択権はほとんどありませんでした。しかし、特別寄稿3オンラインでつながるという選択があってもいい322020 JUL. Vol.433

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