キャリアガイダンスVol.433
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オンラインでは、どのサービスを使うか、どのプログラムに参加するか、誰といつどこで何を学ぶかという選択権が子ども自身にあります。住んでいる地域を超え、行ったこともない、もしくは行こうとも思っていなかった世界とつながれる可能性にあふれています。オンライン上でイキイキと活動する彼らの姿をみて、今の時代だからこそ与えられるこの選択権を子どもたちにきちんと持たせてあげたいと思わずにはいられないのです。 しかし一方で、子どもたちが自由にオンラインに「アクセスできる」のは、Wi-FiやPCなどの情報機器が家庭にあり、子どもの意欲に伴走し、接続をサポートできる大人がいることが前提、ということを忘れてはいけません。オンラインに接続どころか、今日一日を安全に過ごすことすら脅かされている子がいるのが現実で、家庭に居場所がない、支援リソースがない子にこそ届けたい支援も、オンラインからではそもそもつながることができない。 そういった層の子たちをこれまでずっと支えてきたのは間違いなく学校であり、先生方です。今回のコロナショックで経済的に困窮した家庭は増加し、子どものことを最優先に考えられない家庭も多くあります。そんな有事の際も、日本の学校はどんな環境にいる子どもも安心して通い続けられる安全な場所であり、一定以上の教育を受けた免許をもつ教員が学びを通じて子どもたちを社会につなげてくれる福祉的機能を備えた仕組みです。就学義務は今回のコロナ騒動で日本中が再確認した、学校の価値ではないでしょうか。 今、メディアやSNSでは、休校による「学習の遅れ」について様々な意見が飛び交っています。果たして、学習指導要領を遵守することが今真に求められていることであり、それが全員にとって習得すべき適切な分量・レベルなのでしょうか。コロナ以前から、中学生の約6割は塾に通っており、教科学習の習得は家庭や塾、ICTを利用してやっていける時代となっています。そんな今だからこそ、学校や先生方には、教育課程を網羅しなくてはということに時間や心を割くのではなく、子どもたちが安心安全な環境で、心を豊かに耕しながら、「学びの態度」を育てられる場所をどう作っていくかということをぜひ議論していただき、その実現のために使えるものはどんどん使ってほしいと思います。 この多様化した社会で、子どもたちの成長プロセスを学校だけで担うことの限界が来ています。学校に子どもたちを丸投げするのはもうやめよう、と私は言いたい。世界中の人と瞬時につながれる技術があり、子どもたちの成長を支えたいという大人が学校の外にも大勢いる。そのすべてを教育資源としてどう役割分担してつなげていくか、これまで分断されてきた学校と社会をどうつないでいくか、そこに私たちカタリバのような存在が果たすべき役割があると思っています。 これから子どもたち一人一人の興味・関心・課題感に応じた探究的な学びを深めていく時代がやってきます。その実現のためには学校の中だけでなく、世界中の様々なリソースとつながり、様々な壁をとかしていく必要があります。地域・社会の構成員一人一人が教育の担い手となり、子どもたちを支え合う時代がもう来ています。先生方、どうか独りで苦しまないでください。これからは学校だけでなく、みんなで役割分担し、それぞれのスペシャリティを活かしながら、子どもたちの育ちをみんなで支えていきませんか。いまむら・くみ●慶應義塾大学在学中の2001年にNPOカタリバを設立し、高校生のためのキャリア学習プログラム「カタリ場」を開始。高校生の探究型学習支援、課題や事情を抱える子どもの居場所づくり、地方の高校の魅力化、被災地の教育支援など、10代のためのさまざまな活動に取り組んできた。ハタチ基金代表理事。地域・教育魅力化プラットフォーム理事。文部科学省中央教育審議会委員。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会文化・教育委員会委員など。再確認できた「学校の価値」学校に丸投げ、もうやめよう「カタリバオンライン」(https://katariba.online/)では音楽や工作、ダンス、料理などの活動も行われている。5月5日の子どもの日には、全国各地の子どもたちが今の気持ちを話し合い、言葉をつないで作詞し、香川の中学生が曲をつけて制作したテーマソングをみんなで歌った。生徒たちは何を思い、教師はどう動いた? そして、見えてきたもの今、この時の学びを未来へつなぐ332020 JUL. Vol.433

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