キャリアガイダンスVol.433
51/64

まとめ/江森真矢子 撮影/青地大輔はやかわ・おさむ1961年岡山県生まれ。1984年岡山大学大学院教育学研究科卒業。大学院在学時に高校で非常勤講師を務めたことで教職の面白さに目覚め、卒業後に私立高校の教員となる。高校時代から音楽にも携わり続け、教員とラジオ番組の構成作家の二足の草鞋を履いていたが、88年にいったん高校を辞し、メディアの仕事を本業に。構成に加え、テレビ番組の選曲や、自身もパーソナリティーとして担当番組をもつなど活躍。「やりたいことをやる」「面白いことをやる」という生き方は、生徒の進路希望を叶えることへのこだわりや、自ら未来を切り拓く人に育ってほしいという教育観につながっている。94年より関西高校の教諭として再び教壇に立ち、2016年同校教頭、18年より副校長に。2019年に同法人の岡山中学・高校の校長を務め生徒募集を大幅に改善。今年度より2校を統括する法人本部広報室長として両校を率いている。 現代はVUCA(不安定な、先が読めない時代)と言われますが、コロナ禍が多くの人にこのことを実感させました。教育の役割は未来を切り拓く能力を育むこと、しかしその未来が予測できない時代に突入しています。今、教育に求められているのは、未来を予測するのではなく、未来を創る人、突然予測できない状況に置かれたときに、他者と協働して解決することができる人を育てることです。 そのために本校では従来型の学習に加えてSTEAM教育とプロジェクト学習を推進しており、合言葉は「学力とソーシャルスキルを伸ばす」。「コミュニケーションスキル」「ディスカッションスキル」「プレゼンテーションスキル」の3つのソーシャルスキルが育まれるようにカリキュラムや学校行事をデザインしています。STEAMはScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)の頭文字をとったものですが、本校はさらにStrategy(戦略)、Teamwork(チームワーク)、Entrepreneurship(起業家精神)、Action(行動力)、Medicine(医学)をSTEAM教育で育成したい能力としています。 会社経営や、医師を目指す生徒も多いので、EやMが入っています。Mで言えば、医者とは何か、医学とは何か、本当になりたいのかを考えることが大事。こういったテーマについて総合的な探究の時間にディスカッションを重ねています。 本校ではコロナウイルス感染防止対策として政府による休校要請を待たず3月からオンライン学習に切り替えました。2014年から生徒1人1台のタブレットを導入し、オンラインの学びも提供してきたのでわかるのですが、一方的に話すような授業は、プロが作り込んだ映像でなければ、生徒は10分ともちません。本校の先生方は授業動画を活用する他、自ら授業をする場合は短時間の説明・ワーク・提出物へのフィードバックで授業を構成するなど授業力も高まっています。ある先生は「映画『シン・ゴジラ』を見て、政府の危機管理の対応についての考えを書け」という課題を出していて、感心しました。 今の生徒を伸ばすのはグイグイ引っ張るよりも考えたくなるような問いを投げかけ、やる気にさせる先生です。若いころの私自身の反省でもありますが、教員はどんな授業でも聞いてくれる生徒を見て慢心しがちで、数年経つとそれが当たり前になってしまう。 ですがコロナ禍のもと、対面授業の価値も問い直されています。教室での授業も変わりますし、この機会に「学校でなければできないこと」にシフトして教育活動を行う必要があると思っています。生徒だけでなく指導者も「未来創造能力」を問われている今、先生方の創造力を自由に伸ばせる教育環境の構築が、学校経営の最重要課題だと考えています。未来が予測できない時代に必要な学力とソーシャルスキルを伸ばすオンラインでの学びの重要性が見出され対面授業の価値が問い直されている1982年に岡山中学校開校、85年に高校が開校し中高一貫校となる。2005年より東大・国立医学部コース、難関大コースを設置し、中学3年より3クラス高校2年より5つの系に分けた進路志望別の指導を行う。姉妹校の関西高校は1887年に開校した私立岡山薬学校を起源とする男子校で普通科・ITビジネス科・電気科を擁する。岡山中学・高校(岡山・私立)学校法人関西学園法人本部 広報室長生徒も教員も「未来創造能力」を発揮できる環境づくりが学校経営の最重要課題512020 JUL. Vol.433

元のページ  ../index.html#51

このブックを見る