キャリアガイダンスVol.433
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注目すべきは「反転」です。反転によって問題が起こり始めると、解決策を考えて、新たな技術が生まれます。④に注目するならば、フォアキャスティングで捉えつつ、ここで「ほんとうにその在り方でよかったのか」と今までの自動車の在り方をクリティカルに捉える機会をもつことになります。そして、循環型社会や共生といった理想の未来の姿を想定し、その差を埋めるための技術とはどういうものなのか、バックキャスティングで思考することになります。このように、反転は未来を変える原動力になります。 バックキャストとフォアキャスト、反転の思考法を使い、未来に向けた提案まで行うのが今回紹介する授業です。①強化(Enhance) それは何を強化し、強調するのか?②衰退(Obsolescence) それは何を廃れさせ、何に取って代わるのか?③回復(Retrieve) それはかつて廃れてしまった何を回復するのか?④反転(Reverse) それは極限まで推し進められたとき、何を生み出し、何に転じるのか? 自動車というメディアを例に、テトラッドで考えてみます。人間の移動やプライバシーを強化し(①)、馬車の関連産業が衰退しています(②)。一方で、移動の自由や個人的な空間が回復され(③)、渋滞や交通事故という問題が生まれますが、それを転じるために自動運転という技術が生まれます(④)。自動運転であれば、運転支援技術により交通事故を防ぎ、渋滞を緩和するだけでなく、サスティナブルな車作りの技術となります。神﨑史彦1978年生まれ。1996年に法政大学に法学部論文特別入試で合格。在学中より塾講師を務め、卒業後は大学受験予備校などで小論文の講義を担当する一方、模擬試験の問題作成者として活動。20冊の学習参考書を出版。現在は自らの塾を経営しながら、講演や私立学校での講師を勤め、全国各地の高校教育改革ならびに高大接続事業のコンサルティングを行っている。2020年4月よりスタディサプリ講師に就任。社会人大学院生(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科)。21世紀型教育機構アクレディテーションメンバー。● 学習指導例(講座2回目、対象:高3:120分)「もし理想の未来をつくるなら、あなたはどういう力を身に付けるべきか」本時のねらい ①発散・収束に慣れる ②小論文の要素である「意見」「理由」「提案」を導く練習をする ③大学進学や研究の意味を考える ④バックキャストの概念を理解する学習活動指導上の工夫・駆動質問・留意事項教材・教具アイスブレイク(15分)ペアの組成・先攻・後攻の決定個人ワーク「LEGO®をつかって、橋をつくってみよう」ペアワーク「つくった作品をもとに、『情熱を傾けた瞬間』をペアの相手に語ろう」LEGO®★家にあるものをつかってつくるように指示。ワーク①日本(および世界)の現況を把握する(20分)問いの提示※事前に課題を出しています。①安宅和人氏(慶應義塾大学教授・ヤフーCSO)とユヴァル・ノア・ハラリ氏(歴史学者)の動画を視聴して、内容のまとめ②自分が志望する大学・学部・学科で学べることのまとめ(できるだけ精緻化するように求める)「日本の現状について、動画で学んだことをまとめよう」発散(個人ワーク)「動画の内容をもとに、安宅氏とハラリ氏が日本はどういう状況であると述べていたか」※付箋1枚につき、特徴や意味を一つ示す収束(グループワーク)「発散した付箋を分野ごとにカテゴライズしてみよう」(経済・法・科学・政治・宗教・教育・芸術・マスメディア)黄色の付箋(75×75mm)★ホワイトボードやJamboard(Googleが提供するホワイトボードアプリ。オンライン上で参加者が書き込むことができる)を用いる。以下同様。ワーク②フォアキャスティングで日本の未来を推測する(20分)問いの提示「日本の現状を改善しつづけてやってくる未来はどのようなものか考えてみよう」(フォアキャスティング)発散(個人ワーク)「先ほどカテゴライズした領域のうち1つ選んで、そこに集まっている付箋を眺めながら、この状況が続くとどういう世界になりそうか」※付箋1枚につき、特徴や意味を一つ示す。カテゴリー毎に分担してもよい。収束(グループワーク)「今描いた未来を眺めながら、ほんとうにこれまでの在り方でよかったのか、みんなで考えてみよう」(Critical Thinking)青の付箋(75×75mm)休憩(10分)ワーク③バックキャスティング(40分)問いの提示「自分たちだけでなく、世界の人々がこれからも末永く幸せに生きられる未来をどう描くか」(バックキャスティング、テトラッドの反転)発散①(個人ワーク)「先ほどのワークで考えたことを振り返りながら、どういう未来をつくれば自分を含めて多くの人が幸せになりそうか。LEGO®を使って、理想の未来を作品にしてみよう」発散②(グループワーク)「作品の意味をグループの仲間につたえてみよう」「発表者に『この形・色・組み合わせはどういう意味を込めているの?』などと、作品の意味をより詳しく聞き出して、発表者の内側にあることばを引き出そう」※赤色の付箋1枚につき、意味を一つ示す。発表者が気兼ねなく話せるように場づくりする。発言を付箋に書く人を決めておく。収束(個人ワーク)「赤色の付箋で書き留めた内容を眺めてみよう。みんなが掲げた理想の未来の要素を実現するために、君たちはこれからどういう力を身に付けていくとよいか。大学でどういう研究をすると未来づくりに貢献できそうか」※緑の付箋1枚につき、力や研究内容を一つ示す。LEGO®赤色・緑の付箋(75×75mm)リフレクション・チェックアウト(15分)学びの共有「授業を受ける前と比べてどのように成長したか、みんなでシェアしよう」感情の共有「メンバー同士の気持ちを整えるために、授業を通して自分の状態や気持ちを語り、みんなでシェアしよう」水色の付箋(75×75mm)小論文の課題【ホームワーク】「あなたが理想とする未来を定義し、その根拠とともに、その実現のために大学でどういう研究もしくは学びを得たいか」(800字以内)『志望理由書のルールブック』※神﨑氏はLEGO® SERIOUS PLAY®(レゴ®シリアスプレイ®)のトレーニングを修了した認定ファシリテーターです。★:オンラインの場合532020 JUL. Vol.433
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