キャリアガイダンスVol.433
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1998年、共に80有余年の歴史をもつ木江工業高校と大崎高校が統合/普通科/生徒数91人(男子42人、女子49人)/進路状況大学短大11人、専門学校9人、就職12人/2018年 キャリア教育優良校 文部科学大臣表彰 受賞 学校に卒業生や社会人を招いて話を聞いたり、職場に出向いてインタビューをするといった取組は、キャリア教育の定番と言ってよいほど、多くの学校で実践されている。経験のある方ならば、普段会わない大人と話すことで視野が広がったり、積極性が増したり、時に人生の指針となるような言葉に出会って成長する生徒の姿を見てきているのではないだろうか。 今回紹介する大崎海星高校の「島の仕事図鑑」プロジェクトもそんな職業人インタビューのひとつ。ただし、生徒の成長はもちろんのこと、学校や地域の活性化にもつながっていることが特徴だ。生徒有志が制作に参加する『島の仕事図鑑』は、2014年に大崎上島町が移住定住施策として予算化した冊子で、商工会が制作を担っている(下写真)。移住希望者向けのパンフレットとして企画されたが、住民が地域の魅力を再発見する、あるいは課題を考えるきっかけになるなど、地域づくりに寄与するものとして、1号目から町内全戸に配布されるようになった。また、4号目からは町内にある広島商船高専の学生も制作に参加するようになり、制作と絡めて島の未来を語り合うイベントも開催されている。 プロジェクトによって町民と生徒、地域と学校の垣根は低くなった。それまでお互いが抱いていたのが「よく知らない」「先行きが不安」というイメージだとすれば、今は共に手を携えて未来を創る前向きなものに変わってきている。 きっかけは、14年に発足した学校活性化地域協議会のメンバーに商工会会員がおり、企画が立ち上がっていた『島の仕事図鑑』制作に、高校生も参加させてはどうかと働きかけたことだった。「当時はキャリア教育のこともよく知らず、すべて大人がお膳立てして上から指示するスタイル。インタビューには高校生が同行しましたが、文章は全部大人が書きました。また、高校生の撮った写真のほとんどを後から私たちが撮り直しに行きました」と語るのは大崎海星高校魅力化推進コーディネーターの円えんこう光歩あゆむ氏。 その頃は「大人はお金のために仕事をしていると思っていたけどそうじゃなかった!」「何もない島だと思ってたけど面白い人がたくさんいる!」と気づきを得る一方、やらされ感を感じている生徒もいたという。生徒の主体性を高め、成長を実感できるようにするためにはどうしたらよいのか。2号目からはインタビューの内容を生徒が考えるようになった。また、生徒は1号の制作につき2、3カ所に取材に行くが、直後に振り返りを行っている。そうすることによって、メモを読むだけだったのが徐々に臨機応変な会話ができるようにな発行を重ねるごとに増す生徒の参画度地域との探究活動や、町行政や商工会と連携した地域に開かれた学校づくりなど、高校魅力化のトップランナーとして注目される大崎海星高校。島の人・仕事を紹介する冊子『島の仕事図鑑』制作は、教育活動であり地域づくりにつながる取組です。地域を育て生徒を育てる『島の仕事図鑑』取材・文/江森真矢子大崎海星高校(広島・県立)第24回■ これまでに発行された『島の仕事図鑑』2015年に第1号が発行された『島の仕事図鑑』はU・Iターン、造船・海運、農業、地域福祉とテーマを変え、5号目は「学びの島」として職業にかかわらず学び続ける大人の姿を取材。最新号は「島のみらい図鑑~継ぎて」として事業や伝統文化を受け継ぎ未来につながる島の姿を紹介している。これまで発行されたものは、大崎上島町商工会WEBサイトから閲覧可能。同サイトでは制作の様子を紹介するムービーも公開されている。(写真左から)円光 歩氏(魅力化推進コーディネーター)、大久保信行校長、兼田侑也先生562020 JUL. Vol.433

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