キャリアガイダンスVol.434
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ら考えて別の方法を提案してきたんです。ああ、今まで「生徒主体」と言いながらも、教員が設定したゴールに生徒を乗せるだけだった。失敗してもいいから生徒がチャレンジする機会を、学校が用意していなかったんだ…そこに気づいて視界が開けたような気持ちになり、今後はもっと生徒に任せていこうとわくわくしています。上田 確かに、これまで見過ごされてがら、休み時間にもクラスに行って話をするようにしています。教科の授業は他の人に代替できたとしても、このクラスの担任は自分にしかできない、という思いで取り組んでいます。上田 私は、教員は「媒介者」だと考えています。世の中には、私が教えられること以上に、素晴らしい情報や教材がたくさんあります。それらを、目の前の生徒たちの現状を把握し、的確な情報を良いタイミングで投げ、ときには学校外の人や物とつなげながら生徒を伸ばしていくことこそ、教員が力を発揮するところ。教科でも、探究でも、教員が「てこ」となることで、生徒の学びをより大きくできるのではないでしょうか。きた学校現場の問題が、コロナ禍によって表にあぶり出された感触はありますね。変われなかった学校現場がようやく動き出した、という意味では良い流れがきたと思っています。高橋 私が一斉休校になって最初に考えたのは、教員の役割、学校の役割って何だろう?ということです。先生が作らなくても授業動画配信サービスがあるし、自宅でも勉強できるのに学校に行く必要はあるのか…。実際にそう考える生徒もいるだろうと思ったのですが、いざ学校が再開したらほぼ全員が休まず登校したんです。やっぱり生徒は学校を求めているし、教員にしかできないことがあるはずだと、強く思いました。例えば、登校時に入口で生徒の体温を測って体調チェックするのは機械にもできますが、表情から「昨日の試合で勝ったのかな」「何か元気がないな」と感じとって声掛けするのは、私たち教員だからできることなのでしょうね。―改めて、教員の役割とはどのようなものだとお考えですか。伊藤 生徒と向き合うことでしょうか。実は昨年、かねてから興味のあった、全国の先生たちが学校種を超えて学び合う半年間の研修プログラムに参加したんです。そこでワークショップ開発のグループワークに取り組み、対話によっていかに自分の考えが深まりチームワークが発揮できるかを実感しました。そのときふと浮かんだのが、自分は担任として生徒と十分に対話ができているだろうかということ。以後、毎日クラス全員と話すことを自分に課し、名簿に印をつけて漏れのないようにしな「この担任ができるのは自分しかいない」毎日必ずクラス全員と会話 (伊藤)「自然に対話ができて本音で語り合える職場にしたい」との思いで、外部研修で他校教員と共に設計したワークショップを、校内の教員対象に実施。参加者からは「本音の部分をさらけ出せた」「良い職場環境につながった」などの感想があがった。着任2年目、自ら校内研修をコーディネート苦手の数学を克服し、友人にも教えた経験が基で数学教員に。3年間の公立中学校勤務を経て、2018年より星翔高校へ。現在、3学年担任、生徒指導部副部長、ICT委員長。一斉休校中は全国の小中高生の学習を無料で支援する「オンライン寺子屋」に参画。星翔高校(大阪・私立) 伊藤良平先生伊藤先生のアクションスライドで対話の重要性を伝えたあと、参加者がペアをつくり、自叙伝著者と出版社担当者の設定で取材し合うワークショップを展開。大学院在学時に学校臨床実習を行った都立田柄高校に2015年度着任。「高校生記者」の実践で19年に「がんばれ先生!東京新聞教育賞」を受賞、同年東京教師道場修了。20年度都立新宿高校へ異動。学校外では、東京都高等学校国語教育研究会研究部員、東京都アクティブ・ラーニング型授業研究会事務局役員をはじめ、キャリア教育やSDGs、PBLやNIEなど多数の研究会や研修でも活躍。新宿高校(東京・都立) 高橋伸明先生高橋先生のアクション海洋プラスチックゴミ対策に取り組む企業を訪問(写真左)。SDGs推進企業の担当者に直接インタビュー(写真右)。前任校の2学年総合的な学習の時間のなかで、大学生と中期的に連携し、生徒が「記者」となって企業を取材し発表する「高校生記者」を実施。キャリア意識の向上やSDGsの観点で社会・世界を知ることがねらい。活動前は専門学校や就職を考えていた生徒でも、大学生と共に活動するなかで大学進学を選択肢として考え始めるケースも多い。企業を取材し社会を考えるPBL型キャリア学習を企画浮かび上がった教育格差 学びを進化させる「6つの視点」教員意識212020 OCT. Vol.434

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