キャリアガイダンスVol.434
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ることや、がんばっていることがあります。そこに目を向けて、尊敬し合う教員集団になる。そして、それを間近で見て、生徒もお互いを尊敬し合うようになる。そんな学校が私の理想です。―先生方が目指す生徒を育てていくにあたって、学校外との関係性についてはどうお考えでしょうか。 伊藤 家族と教員以外の大人と関わり、多様な価値観に触れる機会も必要だと考えています。それで昨年度、「産業社会と人間」の担当として、企業が出す課題に取り組むプログラムを導入しました。高橋 自分は学生時代、教室での講義以上に、社会人の話やボランティア活動から学んだことが多かったと感じています。ですから、もし教員になれたら生徒を社会とつなげる活動をしたいとずっと思っていました。先ほどお話しした「高校生記者」を始めたのも、そういう思いがあったからです。リアリティが学びを大きくするという信念のもと、企業や大学を実際に訪問することで、人はもちろん施設や空気感など、あらゆるものから学んでほしいと思って取り組みました。かりです。それは、先生方へのリスペクトをもって行動するように、自分自身が変化したからかもしれません。廣瀬 本校では探究を軸にした新しい学校づくりに、全校体制で取り組んでいます。これまで取り組んだことのない先生も少なくないなか、探究課長としては、地道に探究についてみんなで理解を深めていくしかないと思っています。どの先生も何か持ち味にしてい廣瀬 皆さんと同じように、多様な考え方・生き方の大人との出会いのなかで社会を生きていく力を身につけてほしいといった考えから、本校では近くの山形大学や市役所などと連携して探究学習を実施しています。そうした学びを推進していくには、我々教員こそ、もっと外とつながっていく必要があると思っています。上田 学校内でできることの限界に風穴を開けるには、情報の「収集」より、外部への「発信」がカギになるかもしれません。教員から発信することによって、そこに思いもよらない情報が寄せられ、仲間が集まってくるからです。今年の夏休み、進路指導部から1年生に「『ありがとう』をデザインする」という課題を出したんですが、これは私がSNSでアイデアを募って、ある商社社員が提案してくださったテーマなんです。課題の解説動画にも、生徒への応援メッセージを寄せていただきました。例年にない学事日程のドタバタのなか自分一人では決してできなかった、生徒の未来に資すると確信できる実践が生まれた。これこそ、「私は何のためにいるのか」という自身への問いへの答えかもしれない、と思ったものです。―本日はありがとうございました。4人が語った“これから”の教員像座談会の議論からは下記のようなキーワードが浮かび上がりました。そのベースには、先生方の多様な個性を活かしながら、生徒の成長を主体的、協力的に支え、協働していこうという思いがうかがえます。さて、それでは皆さんの場合は…? これからの学校をつくっていく当事者として何を大切にしていくか、同僚と対話してみてはいかがでしょうか。【個人として】•生徒にどんな力を育てたいか を明確にもつ•“人”にしかできないことに注力•目の前の生徒の現状把握をベースに•社会と生徒を媒介する•教科指導プラスαをもつ•常に自身をアップデート【同僚に向けて】•教員同士の対話を 心掛ける•相手に対する リスペクトを忘れない•取組の趣旨や 熱意を伝える•コミュニケーションを 諦めない【学校外に向けて】•学校外と協働して 生徒を育てる•リアリティのある学びを デザイン•まず教員が学校外と つながる•教員から情報発信し、 仲間を増やす1学年進路からの夏休みの課題は「『ありがとう』をデザインする」。上田先生がSNSで広く意見を募り、商社勤務の知人が提案した。幸せにしたい3人を設定して「ありがとう」と言ってもらえることを計画して実行し、気づいたことを振り返るというPDCAを通じて、自分自身を知るのがねらい。SNSでアイデア募集企業人提案の新企画誕生不動産開発営業、専業主婦を経て、出産を機に教育の重要性を改めて痛感したことから2011年度より埼玉県立高校教員。JICA教師海外研修参加経験も活かしSDGsを取り入れた授業を実践。20年度より県立川越初雁高校勤務。進路指導部。一般社団法人の理事を務めるほか、企業の新人研修や女性のキャリアデザインを考える会など多方面で活動。川越初雁高校(埼玉・県立) 上田祥子先生上田先生のアクション学校外とつながる意味とは?上田先生は日常的に教員としての問題意識や取組をSNSで発信している。夏休み前は「進路・キャリア的観点からの1学年夏休み課題、何か素敵なものありますか?お知恵を拝借したいです」といった内容を投稿。浮かび上がった教育格差 学びを進化させる「6つの視点」教員意識232020 OCT. Vol.434

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