キャリアガイダンスVol.434
27/66

 私が常日頃から最優先事項に掲げ、またこのコロナ禍によりその重要性を改めて感じているのが、教員のウェルビーイングです。ウェルビーイングとは、心身ともに健康で、イキイキと幸福に生きること。教員自身のウェルビーイングが満たされていない状態で子どもたちに接していては、いい学びはつくり出せません。担任の先生がいつもイライラして怒りっぽかったり、元気がなかったり、疲れていたりしたら、子どもたちにも伝染します。いくら素晴らしいコンテンツやツールがあっても、それを扱う人が良い状態になければ、活かすことはできません。だから、教員が自分のために時間を使い、しっかりと自分のケアをすることが大事なんです。そして、自分のウェルビーイングを満たすことが、他者の、社会の、そして地球のウェルビーイングを満たすことへと広がっていくのです。 コロナ禍を受け、今、分断が顕著になっています。他者とつながり、対話的・協働的に学ぶ場をつくりたくてもつくれない状況のなか、教員の抱えるジレンマやストレスはとても大きくなっています。また、非常事態下では上意下達で教員の裁量の余地がなくなったことも、疲弊を生む大きな要因になっています。自分で決められない、判断ができないという状況はハッピーではありませんし、思考停止状態に陥ってしまいます。さらに、何が正しいかがわからない状況のなか、学校から感染者を出すことへの恐怖もあります。教員のウェルビーイングが脅かされている今こそ、改めてこれをいかに満たすかを考える必要があるのではないでしょうか。 ウェルビーイングを満たすために重要な要素が、自分のやりたいことをやることです。やりたくないけどやらなくてはならないことをやるのは、誰でもストレスですよね。ですから私は、教員がやりたいことをできる環境をいかにつくるかを、学校づくりの主眼に置いてきました。先生がやりたいことをやって充足感を得て、明るく元気でイキイキした姿で教室に行くことが何よりも大事なんです。そういう先生が増えれば学校全体が活性化し、子どもたちのより良い学びにもつながっていきます。 例えば、私の勤務校である横浜市立日枝小学校では、いくつかのプロジェクトが有志主導で動いています。「働く場プロジェクト」「脱・校長室プロジェクト」「教室環境プロジェクト」などさま教員のウェルビーイングが子どもや学校の活力源になる教員がやりたいことができ、言いたいことが言える学校にすみた・まさはる●1980年より横浜市の小学校に勤務。2010~2017年度は横浜市立永田台小学校校長を務め、神奈川県内の小学校では初めてユネスコスクールに加盟。2018年度より現職。ユネスコスクールやESD(持続可能な開発のための教育)の他、学校組織マネジメントや教員の働き方についての講演・執筆活動を行う。新著に『管理しない校長が、すごい学校組織をつくる!「任せる」マネジメント』(学陽書房)。横浜市立日枝小学校 住田昌治 校長 学校のあり方そのものが問われる今、学校のリーダーに、そして現場の教員には、何が求められるのでしょうか。学校組織のマネジメントや教員の働き方について講演・執筆活動を行い、新しい学校リーダー論で注目される住田校長に語っていただきました。脱・管理。教員を信じて任せる“サーバントリーダーシップ”で、明るく活気ある学校をつくる浮かび上がった教育格差 学びを進化させる「6つの視点」リーダーシップ272020 OCT. Vol.434

元のページ  ../index.html#27

このブックを見る