キャリアガイダンスVol.434
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新たな教育課題と、その先に見えてきた新時代の高校の姿―最初に、それぞれのお立場でコロナ禍で実感したこと、特に高校教育に関する課題感をお聞かせください。岩本 感じたことは無数にありますが、第一は学校の価値を再認識できたことです。当たり前に行われてきたことが当たり前でなくなるなか、これまで学校教育が大切にしてきたこと、例えば安心・安全な居場所で、つながりを通じて学ぶといったことを先生方は守り続けてきたんだなと改めて感じました。離島を始め各地の学校支援に携わってきた私ですが、本当の意味でそれを自覚できた気がしています。 一方で課題も浮き彫りになりました。学びとは本人のものなのに、教師の指示がなくなった途端、学習が止まってしまうケースが多く見られました。今回、臨時休校に振り回されたわけですが、卒業したらいわば永遠の〝休校〞。学校という場がなくても学び続ける「自立した学習者」をいかに育てるかが改めて問われていると思っています。秋田 私は、大学で教職開発コースの教員として先生方の支援や授業研究をするかたわら、近年はOECDとも協力しながら「探究的な学びで高校生をつなごう」「どうしたら学び合いの場はつくれるか」といった中高生のワークショップにも積極的に関わっています。そうした場の中高生は、自分の意見をしっかり発信し、積極的に社会と関わろうとするなど、すごいなと感じていました。この夏も、9カ国の高校生を中心に約300人がオンラインでつながり、「これからの学校や未来をどうつくるか」を話し合う国際フォーラムを開きましたが、「コロナで困った」とか「オンライン環境が整っていない」ということよりも、以前から学校教育が抱えてきた課題、例えば「知識伝達型の授業のままでいいのか」といったことや、「個人や社会のよりよい在り方(ウェルビーイング)とは何か」ということに対して鋭い意見が出てきたことが印象的でした。 一方で、休校中、各地の高校生に話を聞くと、「主体性を奪われていることが苦しい」といった意味の言葉が挙がってきました。どこか一方的な課題学習やオンライン授業において、自分のことを受け止められていないという感覚。高校生が本来もっている主体性を阻んでいるのだとしたら残念です。千葉 私は公立高校の副校長として目の前の生徒にただ向き合ってきました。幸い岩手県は臨時休校は二日のみでしたが、それでも始業式に生徒が抱き合って喜んでいる光景を見ると「学校を止めてはいけない」と強く感じまし学校現場においてさまざまな教育課題が顕在化した一方、多くの先生方や関係者が奮闘を続けてきたことで、希望や可能性も見えてきました。目の前の生徒にどのように向き合うことで、新しい高校の姿はつくられていくのか。教育の在り方に強い想いをもたれている3人に語っていただきました。座オンライン談会取材・文/堀水潤一コロナ禍で浮き彫りになった課題感秋田 喜代美東京大学大学院教育学研究科長・教育学部長岩本 悠地域・教育魅力化プラットフォーム 代表理事千葉 貢岩手県立大船渡高校 副校長342020 OCT. Vol.434
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