キャリアガイダンスVol.434
44/66

442020 OCT. Vol.434生徒:学校、辞めたいなと思っていて…。先生:えっ! どうしたんだ?生徒:なんか、学校にいてもつまんないし、続けていける気がしない…。先生:やっと学校が再開したばかりだし、まだ1年生で高校生活はこれからじゃないか。生徒:う~ん。先生:高校くらいは卒業しておいたほうがいいし、焦って結論出さず、もう少しがんばってみたら。な?生徒: …。先生:最近、授業中辛そうだけど、何かあった?生徒:グループワークが嫌なんです。苦手で。先生:グループワークは、最初はなかなかうまくいかないもんだよ。先生も昔は苦手だったけど、徐々に慣れていくもんだし。生徒: …、でも、全然自信がない。先生:そうか。ただ、これからもっとグループワークとか増えていくぞ。社会に出ると、仕事は毎日、グループワークみたいなものだから、今のうちに慣れておくのが大切だ。生徒:嫌だなあ…。生徒:志望校変更したほうがいいかなと思っているんだけど。先生:どうした?生徒:他の人は成績伸ばしているのに、自分は受験勉強が全然うまくいっていなくて。このままだと間に合わない気がする。先生:まだ本番までは時間もあるし、ここからだよ。生徒:でも、肝心なときにいつも自分は失敗しているから。先生:大丈夫。ちゃんと準備をすればいいんだからさ。ケース1ケース2ケース3クラスに馴染めず、学校を辞めたいという1年生グループワークが苦痛で、日頃の授業でも浮いている2年生受験勉強がうまく進まず、いつも自分はダメだと自信喪失の3年生辞めたい気持ちをしっかり聴き、「一緒に考える」共同体感覚を 生徒に「学校を辞めたい」と言われると、教師はどきっとして「そんなこと言う前に、よく考えて」と言いたくなるものです。しかし、こういうときほど共感的に、生徒の目と耳となって話を聴く姿勢が必要です。「辞める」という行動の目的は何なのか。クラスに馴染めないという言葉が最初に出てくるかもしれませんが、本当は、振るわない成績から逃れたいとか、親がいろいろ言ってきて煩いから復讐的に考えているとか、生徒によって辞める行動の目的があるはずです。そして、そのプロセスを生徒にも気づかせてあげることが大事です。「大事なことだから、一緒に考えてみよう」という横のつながりで、一人じゃないことも教えてあげることが、生徒への勇気づけにもなります。所属感や貢献感が得られるような関わりを意識して、勇気づけをできているところや、良いところに目を向けて勇気づけを グループワークが苦手というのは、グループへの所属感をもてていないことも一因です。また、グループの一員としては、自分がグループに貢献し、他者からも貢献してもらえるという関係が大事です。そこで、日常のなかで何か役割をもってもらい、それを全うできる機会を用意してあげることも必要です。グループワークであれば、資料配りやタイムキーパーをやってもらって「ありがとう」を伝えたり、日頃のクラス運営でも掲示板の資料の貼り出しをお願いして、周囲から「ありがとう」と言ってもらえるような働きかけをしたり。相談のなかでは、そもそもの所属感や貢献感の大事さや、小さなことでも何かした積み重ねで人と信頼関係ができるというような話を伝え、勇気づける必要があるでしょう。 うまく進んでいないときは、過去の自分との比較だけでなく、他者との比較もしがちです。しかしアドラー心理学では、自分の問題は他者と比較しても解決しようがないと考えます。そこをまずはしっかり伝え、自分と向き合う姿勢を取り戻しましょう。さらに、結果ではなく、プロセスに目を向けるような関わりを意識します。今まではどんな努力をしてきたのか、それはすべて無駄なことだったのかと問いかけるのもいいでしょう。また、「いつも」と言っているのが、いったいどういうときで、どのくらいあったかを挙げてもらうと、2〜3個くらいしか出てこないはずです。それよりも、できていた部分に目を向ける。そんな援助で勇気づけをしましょう。

元のページ  ../index.html#44

このブックを見る