キャリアガイダンスVol.434
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522020 OCT. Vol.434 高知県中東部にある香美市で80年の歴史を刻んできた県立山田高校。市内唯一の高校として、2019年度まで普通科と商業科の2学科編成で、地域の幅広い子どもたちを受け入れてきた。しかし、近年は急速に進む少子高齢化の影響や、県立高校の通学区域撤廃による都市部への生徒流出などから、入学志願者が減少。最近では入学定員充足率が50%台前半に落ち込んだ年度もあった。 志願者間の競争が失われたことは、入学生徒の多様化を進めた。教員は同校生徒について「素直で真面目」と口を揃える一方で、基礎学力の未定着や、そのコンプレックスが一因となっている自己肯定感の低さといった課題も指摘する。現在校長を務める正木章彦先生は、同校に教頭として着任した5年前、県が実施した生徒アンケートの結果を見て愕然としたという。「自分のことが好きである」「自分という存在を大切に思える」といった自己肯定感に関する項目についての肯定的な回答率が、県平均と比較してそれぞれ10ポイント近く低かったのだ。 「生徒たちを社会に送り出すにあたって、大きな危機感をもちました。チームで仕事をするなかで自分の意見を伝える。やりたいことを自分自身で決め、それに向かってチャレンジする。そして、困難があっても乗り越えようとする――そうしたことの基盤になるのは、自己肯定感ではないかと思います。生徒の可能性は無限大です。高校生のうちに何かしら自信をつける経験が必要だと痛感しました」(正木校長) こうした課題に対し、同校が打ち出したのが、〝地域の子どもたちを地域と共に育てていく〞ことだ。 発想のヒントとなったのは商業科の実践だった。地域に出て販売実習を行い、地元企業と連携して商品開発にも取り組み、「高校三年生の山田まん」というロングセラー商品を生んだ。そのなかで、成績の良し悪しに関係なく、いきいきと活動する生徒の姿が多く見られていた。 普通科の生徒もそういった輝かせ方ができるのではないか。その経験が生徒の自信を生み、学校全体の活性化にもつながるのではないか。そんな思いから、普通科を含む学校全体として地域連携に舵を切った同校。学校経営の重点項目として「地域で育てる教育」「地域をフィールドにした活動」を掲げ、外部に向けては〝香美市生徒数の減少とともに、活気が失われつつあった山田高校。地域と共に課題探究学習を立ち上げ、生徒の自己肯定感醸成をはじめとする効果につなげてきました。今年度は「探究」を冠した2つの学科を開設し、さらに生徒の可能性を伸ばそうと挑戦しています。取材・文/藤崎雅子自己肯定感の醸成 地域課題探究学習 総合的な学習(探究)の時間 地域との協働教員が積極的に外へ 探究科設置 グローバルな課題探究 起業家育成生徒数減少のなかで自己肯定感の醸成が急務に「地域の学校」を掲げて総学をリニューアル2016年度に商業科が県内企業と協働し「本物」を目指して商品開発した和菓子「高校三年生の山田まん」。特産の地生姜を使用した独特の風味。県内の土産物店や空港、高知アンテナショップで販売されている。
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