キャリアガイダンスVol.434
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■ 開智未来中学・高校(埼玉・私立)授業中ではなく、休み時間中の一場面。授業が終わった後も、生徒同士で話し合っていたり、調べ物を続けていたりすることが結構あるという。ICT活用にも力を入れていて、文書や写真、地図など多様な資料を用意、プロジェクターで映すほか、生徒の手持ちのタブレットからも、資料のデータを自由に取り出せるようにしている。■ INTERVIEW 本校では開校当初より、生徒の学び合いを推奨し、質問することや投げかけに反応することを大事にしてきました。野中先生は本校の卒業生でもあり、そうした学びを体験されてきています。それだけに、自身の経験も活かして、学び合いの授業を推し進めてくれていると感じています。 ICTの活用にも積極的です。世界史の授業では、同僚の工藤先生が作った独自テキストがあって、生徒たちのバイブルとなっているのですが、野中先生はそこに加えて、写真や動画、意見を集約するシステムなどもうまく使ってくれています。 もちろんICTはあくまでも道具です。私自身、情報の教科を担当し、「スマホやタブレットを何かに使うときは、画面の向こう側に仕組みを設計した人がいて、その人次第で良くも悪くなる」と生徒に伝えてきました。ICTを導入すればいいという話ではなく、先生の中にやりたいことがあり、そのためにICTを使うことが重要で、野中先生はそうした授業デザインをされていると思うのですよ。校長加藤友信先生学び合いやICT活用をねらいをもって推進けたいか考えた。野中先生がイメージを喚起する。「ポイントは各国の思惑です。これまでを踏まえると、希望とか、欲望とか、恨みとか、いろいろありますよね」。 次にグループワーク。同じ国を担当した生徒同士で集まり、意見を出し合った。いわば国際会議前の本国での打ち合わせだ。例えばフランスのグループでは―― 「賠償金、もらえるならもらいたいよね」 「アメリカに借金もあるんだし」 「領土問題は? 首をつっこむと…」 続いて別のグループワーク。今度は各国の代表役がそろう5人組で、講和条約の中身を話し合った。他人の意見に耳を傾けるのが前提だが、「自分の国の意見もちゃんと主張してください」と野中先生。「意見を押し通さないと、その代表は国に帰ってからどうなる?」と発破をかけた。 すべてのワークを終えてから、教科書の内容を確認した。敗戦国の海外植民地は剥奪され、戦勝国が「委任統治」 とはいえ、複数の戦勝国と敗戦国の思惑が入り乱れるなかでの講和条約は複雑で、徒手空拳で考えるのは難しい。 そこで野中先生は資料を示してみせた。「とある人物が講和会議の原則を提案したんです」と。当時の米大統領、ウィルソンによる「平和十四カ条」だ。生徒たちは考えるための準備として、隣同士のペアで、まずはこの条文の抜粋版の読解と要約にチャレンジした。 「秘密外交の禁止」。国民の目の届くところで外交をしよう。「民族自決」。各民族が支配されず、自分で自分の運命を決められるようにしよう。提唱されたのはそんな原則で、全体でも情報を共有した。 ここからがいよいよ本題だ。 生徒たちは各自が戦勝国側の米・英・仏・伊・日のいずれかの代表役になり、講和条約の内容を話し合うことになった。 まずは個人ワーク。自分の担当した国について、敗戦国側にどんな条約をつきつしたこと。民族自決の理念からそれを植民地とは表現しなかったこと。ドイツに天文学的な賠償金が課されたこと…。 史実に基づく生徒の思考はさらに続く。講和条約により1920年には「国際連盟」が発足するのだが、この組織は哲学者カントの著書『永遠平和のために』に影響を受けたという。その日本語訳の抜粋を読み、「自分たちならどんな国際連盟にするか」もペアで考えてみたのだ。 ワーク後、実際の国際連盟の体制と欠陥を確認。何か釈然としない空気になったところで、野中先生が切り出した。 「今日の内容について混乱している人もいると思うんです。みんなで読んだこと、考えたこと、実際に形になったこと。完全に一致していたかな。違和感があったなら、どのあたりでそれを感じた? 最後に二人組で話し合ってください」 そのペアワークでは、平和十四カ条と講和条約の具体的な食い違いを指摘した生徒もいれば、「きれいごとを言っても、結局、勝った国しか平和になってない」と全体の印象を語った生徒もいた。 締めくくりに野中先生が投げかけた。 「カントの著書には『将来の戦争の種をひそかに保留して締結された平和条約は、決して平和条約とみなされてはならない』とあります。実際には、講和条約後にドイツでは不満がたまり、ある政党が台頭し、他国に攻め入ります。平和を目指したはずのベルサイユ体制は『将来の戦争の種を蒔いた』とも言えますね。いわば皆さんは、国際協調体制を目指したときの『理想』と『現実』にふれたわけです。そして理想と現実が離れていたことで、世界では戦争の種が発芽して再び大きくなります。だから、明日からはその続きの話をまたみんなでしようよ」社会の理想と現実を体感しさらにその先まで話し合う教育目標は「国際社会に貢献する心ゆたかな“創造型・発信型”リーダーの育成」。開校以来、学び合いを積極的に取り入れ、6つの授業姿勢(ねらい・メモ・反応・発表・質問・振り返り)も大事にしてきた。各教科や探究活動と連動した「哲学」の授業を行っているのも特徴の一つ。また、ICTの導入についても、単なるテクノロジーの学習ではなく、「つなげる知能」の育成という位置づけの下、力を入れてきた。2019年度よりタブレットを生徒が1人1台持つ学習環境が整っている。普通科/2011年創立生徒数(2020年度・高校)477人(男子276人・女子201人)進路状況(2019年度)大学135人・短大3人・専門学校/各種学校7人・その他42人〒349-1212 加須市麦倉1238番地 0280-61-2032 http://www.kaichimirai.ed.jp/592020 OCT. Vol.434
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