り返る。そして、そこで得た気づきを表現する。これにより学びが深まり、さらに次のチャレンジにもつながる。こうした学びのサイクルが生まれる学習方式を本校では〝リフレクション学習〞と名づけ、これを軸に学びをデザインしています(図2)」 「授業」におけるリフレクションは、教員ごとにスタイルも使うツールもさまざまだが、内容面の振り返りだけでなく生徒自身の気づきを促すよう設計されている。阿部先生は、自らの英語の授業での事例を挙げながらこう話す。 「例えば、黒人男性のジョージ・フロイドさんが殺害されたニュースの動画を視聴し、その後に、『自分の捉え方の面で、何か変わったことはないか』と問いかけ、生徒に書かせます。ここで、あった・なかったの二択で終わってしまっては、たとえ生徒のなかで感じたことがあっても記憶に残らず流れてしまいます。大事なのは、50分間の授業のなかで自分がどう変わったのか、自分に何が起きたのかという気づきを促し、可視化すること。変わったことがあったならどう変わったのか、なかったなら他に何か感じたことはなかったかと、表現に奥行きが生まれるような問い、考えるとっかかりとなる問いの設定を意識しています」 問いは先に投げかけることもあれば、あえて何も言わずに教材を提示し、後から問いかけることもあるという。「リフレクションは思考を促し、学びを深める手段。目的になりがちなので、そこは注意している」と阿部先生は言う。 一方、現在も数学と探究の授業を担当する辻本教頭は、数学の授業において、オリジナルの振り返りシート(図3)を作成。授業の最後5〜10分をリフレクションの時間にあてている。シートの上半分では自己評価やできたことを項目に沿ってチェックし、下半分では学習内容や行動、他の生徒からのフィードバックを振り返り、気づいたことを記述する仕立てだ。 「振り返るのは、自分ができたことや良かったこと。最初はチェック部分だけで、これはいわば作業的な振り返りです。慣れてきたら記述部分を増やしていきます。学んだことや学習への取り組み方から、クラスメイトからのフィードバック、さらにそれを踏まえての気づきと、考えて言語化する内容を少しずつ広げていきます。そして、生徒のリフレクションは、次の授業の最初に〝グッドプラクティス〞としてクラスみんなの前で名前は出さずに紹介します。すると、こういうことを書けばいいんだ、こういう人もいるんだと、クラスの雰囲気が変わってくるんです。全体での共有はとても大事だと感じています」 「成績に直結するものではなく、リフレクションだけの効果とは言い切れない」としながらも、阿部先生は「クラスの雰囲気や学びに向かう姿勢は確実に変わってきた」と言う。 「教員がうまくファシリテートして生徒主体の授業デザインができているクラスは、ぼんやりしている生徒がいないんです。生徒たちの間でも、わからないことは教えてもらい、わからない子がいれば教えるという学び合いが常態化しています。リアルな関わり合いのある学取組のサイクル図学びに向かう姿勢自己肯定感自らの価値観で正しく判断する力学びのサイクル図2:「3つの学び」の融合学びを振り返り継続させるリフレクションを軸に、個別型学習・協働型学習・プロジェクト型学習の3つの学びを融合したカリキュラムにより、変化の激しい時代を生き抜くための力を養う。個別型学習(基礎的な知識・技能の習得)協働型学習(教え合い、学び合いで知識を活用)プロジェクト型学習(教科の枠を超えた実践的探究授業)リフレクション学習学び・アウトプットリフレクション次の行動自分・他者・社会についての気づき学びの深化・意欲の増大教師からの問いかけ改善・チャレンジ内省・他者との協働自分に何が起きたのかを問いにより気づかせ可視化する実践「授業」生徒同士の学び合いが進み、クラスの雰囲気が変わる生徒の変容122020 DEC. Vol.435
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