キャリアガイダンスVol.435
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びを軸に授業デザインができているクラスは、生徒の学びの質が高まっていると感じます」 また、辻本教頭もこう語る。「放課後に生徒たちが自発的に集まって勉強する姿が見られるようになり、学びの集団が形成されるようになったと感じています。生徒からの質問の質と量も変わってきました。以前は試験前には多くの生徒が質問に来て、その内容も漠然と『わかりません』だったのが、今では数自体がぐんと減り、内容も『この問題のこの部分がわからないんです』と具体的な相談になりました」 授業でのリフレクションを拡張したのが、昨年度から始まった「終礼」のリフレクションだ。「追手門モジュール」と名づけられ(図4)、「学びの個別化」「ポートフォリオ」、「面談」、「単元テスト」の4つからなる。平日(火〜金)の7時間目と土曜日の3、4時間目を廃止し、終礼を平日25分間、土曜日50分間と長めに設定。この時間を追手門モジュールにあてている。「思い切ってカリキュラムを大きく改訂し、幅広い観点で生徒が自身の学びを振り返る時間にあてた」と辻本教頭は話す。 そして、辻本教頭が「本校のリフレクションの取組を牽引するもの」と言うのが、今年度開設された教科「探究科」(授業名は「探究」)だ。リフレクションを学びの軸の一つに据え、「まずはやってみる。それから頭で考える」ことをコンセプトとしている。探究科主任の池谷陽平先生は、こう話す。「生徒たちはインプットばかりでアウトプットする場がありません。アウトプットの機会がなければ振り返ることもできませんし、特に探究は自分ごと化しません。だから、まずは自分を出してみようというのが本校の探究です。そのアウトプットに対してリフレクションすることで、自分自身について気づき、集団での役割に気づき、学びへの原動力や社会課題への関心、自己肯定感の向上へとつなげていきたいと考えています」 具体的な課題を設定して探究するという一般的な探究学習とは異なり、同校の探究では課題探究の土台となるマインドセットに重点を置く。出発点は、自らの価値観の探究だ。レゴ(シリアスプレイ)や写真、動画、コラージュ、お面づくりといったアート的な創作活動とリフレクションを組み合わせ、学年を追うごとにパーソナルからソーシャルへと探究の対象を拡張していく。「中高6年間では課題探究・解決へのマインドセットしかできなくても、長い目で見ると十分に意味のあることだと考えている」と池谷先生。探究科専属と兼務を合わせて11名の教員が探究の授業を担当し、探究で得たリフレクションのスタイルを他の科目の授業に取り入れる動きも出ている。 カリキュラムの改訂にも踏み込んでリフレクション学習を取り入れてきた同校だが、「まだまだ模索中。教師自身のリフレクションや協働が十分ではなく、ファシリテーションもスキルアップが必要」と辻本教頭は現状を語る。生徒の学びの質をより高めるため、3人の先生はそれぞれ次の打ち手を考え、展望を描いている。「生徒の気づきを促し学びを深めるためには、問い立てが非常に重要です。本質的な問いの立て方・投げ方のスキルを教員自身が身につけるため、来年度からは年間の研修プログラムにも織り交ぜていく予定です。大事なのは、トップダウンではなくミドルリーダーから広げていくこと。その牽引役として、探究科には大いに期待しています」(辻本教頭)「英語科では、今年の高校1年生の担当全員で、ベースとなる授業デザインを一緒に作っています。生徒目線の授業デザイン、常にリフレクションとつながり連動した授業デザインです。教員間の協働を進め、従来の教員文化を変えていきたいと考えています」(阿部先生)「探究では活動のフェーズごとにリフレクションを繰り返し、最終的には校外での活動や真に主体的な進路選択につなげていきたいと考えています」(池谷先生)※ダウンロードサイト:リクルート進学総研>> 発行メディアのご紹介>> キャリアガイダンス(Vol.435)図3:辻本教頭作成の振り返りシート図4:「追手門モジュール」の実施内容火~金曜日の終礼時(25分間×4日)には「学びの個別化」「ポートフォリオ」「面談」を日替わりで、土曜日の終礼時(50分間)には「単元テスト」を実施し、週3単位の学校設定科目としてカリキュラムに組み込んでいる。資質・能力の向上リフレクションの充実のため、「活動メモ」(スタディサプリの機能)を蓄積し、学びのデータである「キャリア・パスポート」の作成につなげる基礎学力の向上単元テストやオリジナルのテストにより学習内容のリフレクションを行う基礎学力の向上個別的学びを推進するため、スタディサプリを用いた学び直しを行う学びに向かう姿勢の育成生徒との対話・メンタリングを行うポートフォリオ単元テスト学びの個別化面談自分から集団、社会へと気づきの枠を広げていく実践「終礼」「探究」リフレクションを支える問いや授業デザインの質を上げる今後の展望「学びに向かう力」を育むリフレクション授業、探究、HR、部活動・・・実践事例132020 DEC. Vol.435

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